🐶だって寂しいじゃないか ページ32
ダルメシアside
「……何で?」
ちょっと冷たい声に、僕はビクッとしながら言葉を続けた。
「だ、だって元々人間なんだろ?だったら彼にも家族とか、友達とか居るはずじゃないか。ト、トランプ兵になってもさ、そういう大切な人達との思い出は残しておいた方が……」
「必要無いよ。それに、彼の周りの人間にはもう彼を覚えてる人は居ない」
「え、な、何で……」
何で言い切れるんだ。何でそんな寂しいこと……っ
「僕が消した。彼の記憶から周りを、周りの記憶から彼を。下手に覚えていたら情けをかける、現実に戻りたいと思い始める。折角素敵な夢の世界に来たんだ、何もかも忘れて生まれ変わった方がいいだろ?」
笑顔で告げる彼の目に嘘はない。本気だ。本気だからこそ、その笑顔が怖い。
「で、でもっ」
「やめておけよぉ、こいつの国のこと知ってんだろ」
ジョーが僕を止めてだるそうに一息つくと、嫌そうにジャックに視線を移した。
「イカれた頭の連中だ。からっぽでも楽しけりゃそれでいい、だろ?」
その一言で、ジャックはニヤリと笑顔になった。口が三日月のように裂けたような、人形みたいな怖い顔。
僕は、こんな親友の顔は知らない。
「よく分かってるじゃないかジョー!そう、僕の世界はエンターテイメント!まともな奴は1秒たりとも存在できやしない!だから空っぽの方が丁度いいのさ、皆イカれてないと気が狂ってしまうからね!」
「サイコトランプめ」
「褒め言葉として受け取っておくよ!」
ケタケタ笑う彼は本当に幸せそうだ。僕には理解できないけど、それが彼らハートの国の幸せなのか?
「……ジャック」
「何?」
「君は、彼が好き?」
あの時した質問は、どんな気持ちで答えてたの。
彼のような道化が好きなの?それとも、彼が好きなの?僕にはもう分からないよ。
「大好きだよ」
そう答えた彼の顔は、いつにもなく真剣だった。
……そっか、そうか。君はそこだけは、本気で好きになっちゃったんだね。
「ケッ、惚気かよ」
「仲が良くて良いじゃないか。でも入れ込むのも程々にね」
「お前にはもったいないから私が貰ってやろうか」
「煩い毒林檎さっさと腐れ」
「あ゛?」
「は?」
「ハイハイ喧嘩しないの!全くお前達は…」
僕は寂しいと思う。でも、今が楽しいならいいのかな。
……ううん、そうじゃない。何もかも空っぽになったからこそ、僕達が楽しませないといけないのか。
「(少しでも彼が寂しくないようにしなきゃ)」
♡皆で内緒の話をしているんだ→←❤悪役ってそんなものだろう?
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月11日 21時