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始まり ページ1

小さい頃からよく夢を見る。それは真っ暗で先の無い夢だ。
前後左右、全てが黒く何も見えない。あるのは自分の視界に写る手足だけだ。
動くことは出来ても体が重くて上手く動くことが出来ない。まるでべっとりと粘着質なインクが体に纏わり付いているような気分だ。
口を開いても出てくるのは無音。喉の動きは感じるが音を発することは出来なかった。
別に恐怖は無い。でもこれは俺の何を表しているのだろうといつも思う。
夢は見る人の願望や記憶を元に作られることが多いらしい。だとしたらこの夢は一体何を意味しているのだろう?
不安な気持ちか、孤独感か、それとも一人になりたいという願望か。

そんな事を考えていると、遠くの方で光が差し込むのが見えた。
真っ白な光だ。まるで暗い洞窟を照らすような白い光。
その光を見るとその先に行きたくなって足が勝手に動き出す。重くて動けたもんじゃないってのに、体は言うことを聞いてくれない。
白い光が近づくと、薔薇の香りが鼻を擽る。真っ白で何も見えないその先から漂う香りの中で、何かが動いたような気がした。
薔薇の香り、インクの香り、芝生を踏む足音、そして、


『……んぁ…?』


目を覚ますと見慣れた天井が目に入った。……何だ、起きちゃったのか。あの夢の続きをもう少し見ていたかったのに。
欠伸を漏らしてベッドから起き上がり、顔を洗って朝食の準備をする。紅茶が色付くのを待つ間に学校に着て行く服を選び終えてから、簡単に朝食を済ませて紅茶を飲み干した。
課題は昨日の内に終わらせてあるし予習も完璧。あとは先生から頼まれている文化祭の用具を昼休みの内に移す作業だけが残ってる。予定を再確認して歯を磨き終えると、早速着替えてリュックを背負った。

『あ、忘れてた』

靴を履く前にリビングに戻って引き出しの上にある赤いハートのロケットを手に取る。これは俺の大切な宝物だ。肌見離さずつけてないと駄目なんだ。
ロケットを首から提げて外に出る。鍵を閉めてアパートの階段を下りてから、意気揚々と学校に向かって歩き出す。
今日もいつも通りの日常が始まるんだ。燦々と降り注ぐ太陽の光を浴びながら、辺りの音を聞きつつ歩を進めた。

❤君の日常はとても退屈なものだった→



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設定タグ:ヴィランズ手下 , 男主 , ディズニー   
作品ジャンル:ファンタジー
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月11日 21時

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