散らばる星はその地で輝く -9-【短編集】

《リクエスト》女の子でも君が好き -1-【ディルック】 ページ4

フラッドside

『どうしてこんな事になったんだ……』

朝一番、食事を終えてからテーブルに肘をついて、僕はがっくりと肩を落としていた。
ディルックが中々起きない僕を起こしに来てくれて、そんな彼が僕を見て固まったところまでは憶えている。それで自分の体を見たら……

『何で女性になってるんだ、僕……』

この豊満な胸、物凄く邪魔だ…。というか何でこうなっているんだ！？昨日の夜までしっかりと男だったのに！！

「昨日秘境に行ったとか、アビスの魔術にかかったとか、そういう事は無かったのか？」
『さっぱりだ。昨日は確かに皆でピクニックに出かけたけど、怪しいものとか口にしてないし……』

ひとまず服はいつも着ているものを着たが、それでも袖や裾が余ったから捲し上げている。筋肉だって落ちているし、いつも通りのような動きはできないと思った方がいいだろうな……。

『(一体何でこんな事に……)』

アビスの力は感じない。となると地脈異常？秘境にも行っていないのに？
いや、もっと落ち着いて原因を探っていこう。まずは昨日の事を思い出して……。

「フラッド」
『ん？』

顔を上げると、彼がとても真剣な表情で僕を見ていた。

「今日は部屋に居てくれ。仕事は僕が引き受けるから」
『えっ、そ、そんな！大丈夫だっ、女性の体でも仕事ぐらいできる！』
「君なら確かに容易く出来るだろうが、そうじゃないんだ」

彼の顔に少し赤が差す。言い淀むように視線が泳いで、赤い瞳が伏せるようにテーブルへと落ちた。

「…その……今の君は、とても綺麗だから……。……他の人に見せたくないんだ……」

………え。

『……綺麗…？』
「……あぁ」

コクンと彼が頷く。その動作と言葉を脳内で反芻して、意味を漸く理解した瞬間、

『……そっ、そっか……っ』

ドッと凄い音を立てて胸がドキドキしてしまって、一気に顔が熱くなるのが分かった。

『……』
「……」

ど、どうしよう……っ。いつもならこんなドキドキしないのに…っ。

『(何で今日に限って彼が物凄く格好良く見えるんだ…！？)』

彼の周りがキラキラして見えるんだっ、あぁもう！胸が煩いっ！！

「フラッド…」

する…と指先に彼の指が触れる。テーブルの上で指が絡んで、ぎゅっと握られて。
手から視線を彼へと向ければ、目の前には顔が真っ赤な彼が、ぐっと我慢するような険しい顔で僕を見ていた。

「今日の夜、君の部屋に行ってもいいかい…？」
『……あ、ぅ……っ』


どうしよう。好きだ。

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