第六幕 -決意の明星- ページ35
「＿＿＿ちゃん」
声がする。誰の声かも分からない、懐かしい声がする。
「お兄ちゃん！」
『……っ！』
目を開けると、其処は真っ白な室内だった。
此処は……何処だ？僕はどうして此処に……？
そうだ、僕は旅人達と野宿をしていて、ヒルチャールが襲ってきて……暴徒に脇腹を……。
「もう、何ぼーっとしてるの？お兄ちゃん」
………この子は、誰だ？
藍色の髪を一つに纏めた少女が僕を見て首を傾げている。
辺りを見渡せば石で出来た壁や床が目に入り、窓辺に置かれた色とりどりの小さな花だけがこの白い空間に色を添えていた。
少女は僕をじっと見ている。その瞳は綺麗な赤色で、星の瞬きのような十字の瞳孔が浮かんでいた。
「早く食べないとご飯が冷めちゃうよ？今日は＿＿さんのお家に行って、錬金術の勉強の続きをするんでしょ？」
『あ、あぁ……。そう、だったな……』
「……？どうしたのお兄ちゃん。顔真っ青だけど……」
『……いや、何でもない』
……そうか。"私"は、悪い夢を見ていたのか。
ほんの少し怖い夢を見たんだ。ほんの少し怖くて、それ以上に楽しく幸せな夢を見たんだ。
異世界の旅人の話を、飄々とした氷の騎士の話を、そして…炎を纏う剣士の話をしよう。きっとお前も、気にいる筈だ。
【夢であるのは、果たしてどちらだろうな】
そんな声が聞こえた。それは自分の声だった。
白亜の家が燃えていく。花は枯れ、家は崩れ、人々の悲鳴と嘆きが辺りから立ち上る。
私の腕の中には、虫の息になった妹が、徐々に魔物に変わっていく妹が横たわっていた。
【お前は何も守れなかった。ただの出来損ないだ】
この惨状を背後に、それは私の前に立っていた。
【お前は実の妹すら、守りきれなかった。お前のような者は、魔物のように惨めに死んでいくのがお似合いだ】
指を差される。嗤われる。血に濡れた己の指先から徐々に漆黒が広がり、人ならざるものへと侵食されていく。
私はただ、この腕の中にある命さえ守れれば良かった。他には何も要らなかった。
妹だけが、＿＿だけが、私の全てだったのに。
すまなかった。不甲斐ない兄ですまなかった。お前の命すら守れない、出来損ないの兄だったのだ、私は。
そう。結局私は、出来損ないだったんだ。
『………』
目を覚ます。見えるのは木製の天井。聞こえるのは驚きに息を呑む声。
「フラッド……」
『……』
此処は……何処、だろうか。
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九龍(プロフ) - 暁月臨さん» コメントありがとうございます！風邪をひかない内に更新しますので、服を着る準備もしてくださいねー！ (3月28日 10時) (
レス) @page38 id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - あ…あ…尊いです語彙力なくて申し訳ないですけど本当に好きです…(脳死)更新全裸土下座で待機させていただきます…！！！ (3月28日 4時) (レス) @page38 id: efeff932b9 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - もにもちさん» これからディルックさんはどうなるのか…楽しみにして頂けると嬉しいです！フラッド君は今張り切ってますので絶好調ですね！これからも戦い続けますよー！適度に休んだりしていますのでご心配なくー！ですがお声掛けして下さりありがとうございます！ (12月23日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - いやぁ、、、ディルック様気付き始めましたねぇ、、ふふふ、、、フラッド君強すぎじゃありませんこと？もう大好きなんですけど、まじで。はい。、、、ほ、本当に大丈夫ですか？体調とか時間とか、、、理由はなにかれ、なんであれ自分の体を労ってあげてください！！ (12月23日 21時) (レス) @page26 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - えめっちゃ続きが気になる〜！！神作品2個目、そして更新ありがとうございます！これからも頑張って下さい！体調には気をつけて。 (12月10日 6時) (レス) @page16 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年12月6日 1時
