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第五幕 -己の進むべき道- ページ31

フラッドside

荒れ狂う風に崩れた廃墟。龍が暴れたかのような遺跡を遠くに見ながら、松明で焚き火用の枝の山に火を点けた。
風龍廃墟に着いた頃にはすっかり夕暮れになっていて、拠点作りの為に魔物を追い払ったりしていたら空は青と赤が混じる暗いものへと変わってしまった。時間が経つのは本当に早いな。

パチパチと焚き火の炎が大きくなる。温かな焚き火の温度に冷えた指先を当てれば、じんと温かさが指先に広がっていった。

「火付けありがとう、フラッドさん」
『どういたしまして。君達も安全確認お疲れ様』

フラフラと飛んでくるパイモンの手を取れば「疲れたぞぉ〜…」なんて言って僕の手を握ってくる。
そんな彼女を膝に乗せて頭を撫でる中、旅人は微笑んで僕と向かい合うように腰を下ろした。

「風龍廃墟はどう?」
『初めて来たけど神秘的な場所だね。ただ此処の風は少し…荒々しくて寂しそうだ』

荒れ狂う暴風は全てを拒絶しているようだ。ワイナリーに流れる寄り添う風とは大違いだな。

「……ねぇ、フラッドさん」
『ん…?』

すやりと寝息を立ててしまった彼女を撫でていれば、旅人は何かを思い詰めたように焚き火へと落としていた視線を上げる。
黄金の瞳には何かを決心したような光が宿っていて、その目を見た時、何故か少しだけ緊張したように胸が冷えた。

「フラッドさんは、その…魔物として過ごしていた時の記憶はあるの…?」
『…少しだけなら』

ディルックにも聞かれたな……。彼も僕の事を知りたいのだろうか?

『僕が憶えているのは、仲間に拒絶されて殺されかけた時の記憶だけだ。それ以外は憶えていない』

膝上で寝入るパイモンの頬を撫でながら、あの時の事を思い出していく。


忘れもしない。目を開けた瞬間に迫ったあの光景を。
同胞からの侮蔑の視線と、淡々と降り注ぐ攻撃の雨を。


"貴様は深淵を拒み、その意志も記憶も全て失った出来損ないだ"


同胞達はそう言って僕を殺そうとした。ただ不要な物を廃棄するように。
その視線と殺意は今でも死への恐怖として染み付いている。その恐怖から逃げたい一心で逃げ続けて、そしてこの世界にやって来たんだ。

今思えば随分と嫌な記憶だ。と言っても、今の僕にはもう関係無いものなんだが……。


「…じゃあ、人間だった時の記憶は?」


ドクンと、全身が熱く脈打った。

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九龍(プロフ) - 暁月臨さん» コメントありがとうございます!風邪をひかない内に更新しますので、服を着る準備もしてくださいねー! (3月28日 10時) (レス) @page38 id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - あ…あ…尊いです語彙力なくて申し訳ないですけど本当に好きです…(脳死)更新全裸土下座で待機させていただきます…!!! (3月28日 4時) (レス) @page38 id: efeff932b9 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - もにもちさん» これからディルックさんはどうなるのか…楽しみにして頂けると嬉しいです!フラッド君は今張り切ってますので絶好調ですね!これからも戦い続けますよー!適度に休んだりしていますのでご心配なくー!ですがお声掛けして下さりありがとうございます! (12月23日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - いやぁ、、、ディルック様気付き始めましたねぇ、、ふふふ、、、フラッド君強すぎじゃありませんこと?もう大好きなんですけど、まじで。はい。、、、ほ、本当に大丈夫ですか?体調とか時間とか、、、理由はなにかれ、なんであれ自分の体を労ってあげてください!! (12月23日 21時) (レス) @page26 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - えめっちゃ続きが気になる〜!!神作品2個目、そして更新ありがとうございます!これからも頑張って下さい!体調には気をつけて。 (12月10日 6時) (レス) @page16 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月6日 1時

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