第五幕 -己の進むべき道- ページ25
フラッドside
テントで目覚めた僕達は、朝食を食べ終えてからまた歩き出した。
望風山地から南に向かって、星落としの湖、千風の神殿、風立ちの地を過ぎ、今はダダウパの谷に来ている。
『彼処で間違いないかな?』
「うん。あの集落で合ってると思う」
茂みの陰から様子を窺う。僕達の視線の先には、斧を持った暴徒が二体存在するヒルチャールの集落が見えた。
実は旅人の依頼の関係で、ヒルチャールの集落に持ち込まれた鍵を取りに行かなくてはいけないんだ。あの集落で間違いないらしいんだが……。
『依頼主の方は本当に"ヒルチャールに鍵を盗まれた"って言ったのか?』
「うん。荷物の整理をしている隙に盗られたって言ってた」
『その人も運が無いな』
大方珍しい形の物が気になって持って行ったんだろう。流石に返してもらうしかないな。
「フラッドさん、戦えそう?」
『戦う?別に戦わなくても良いだろう?』
「え?」
『鍵を奪われただけなら話し合いで充分だ。僕が交渉してくるから、二人は此処で待っていてくれ』
鍵ぐらいなら彼らも渡してくれるだろう。
「お前そんな事ができるのか!?」
『……忘れてるようだが、僕はアビスの魔物だぞ。交渉ぐらい出来る』
これでも彼らとは交流していたんだ。ヒルチャールの言語だって精通しているに決まってる。
『じゃあ行ってくる』
「気をつけて…!」
「何かあったらすぐ戻ってこいよ…!」
『あぁ、戦闘になりそうだったら合図を送るよ』
さて……後は僕次第だな。
茂みから出て集落へ向かう。ゆっくりと集落に近づいていけば、見張り台の上に居る弓矢のヒルチャールに気づかれた。
【"人間ダ!敵襲ダ!"】
ま、こうなるか。でもまだ想定内だ。
集落が騒がしくなる。弓を構えるヒルチャールが僕目掛けて矢を放った瞬間、右手を真横へと伸ばした。
顕になるのは黒と青の大きな両手剣。その柄を握ると同時に振り上げ、飛んできた弓矢を斬り捨てた。
『"突然の訪問を許して欲しい。君達が攻撃をしないのであれば、此方も手は出さないと誓おう"』
ガンっと剣を地面に突き立てて柄に手を添えると、ヒルチャール達の動きはシンと静まり返った。僕の言語はまだ通用するみたいだな。
【"人間、オ前ハ我ラノ言葉ヲ理解出来ルノカ?"】
斧を持った暴徒が立ち上がり僕の前に立つ。その巨体を前に、僕は笑って頷いた。
【……"話ヲ聞コウ"】
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九龍(プロフ) - 暁月臨さん» コメントありがとうございます!風邪をひかない内に更新しますので、服を着る準備もしてくださいねー! (3月28日 10時) (レス) @page38 id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - あ…あ…尊いです語彙力なくて申し訳ないですけど本当に好きです…(脳死)更新全裸土下座で待機させていただきます…!!! (3月28日 4時) (レス) @page38 id: efeff932b9 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - もにもちさん» これからディルックさんはどうなるのか…楽しみにして頂けると嬉しいです!フラッド君は今張り切ってますので絶好調ですね!これからも戦い続けますよー!適度に休んだりしていますのでご心配なくー!ですがお声掛けして下さりありがとうございます! (12月23日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - いやぁ、、、ディルック様気付き始めましたねぇ、、ふふふ、、、フラッド君強すぎじゃありませんこと?もう大好きなんですけど、まじで。はい。、、、ほ、本当に大丈夫ですか?体調とか時間とか、、、理由はなにかれ、なんであれ自分の体を労ってあげてください!! (12月23日 21時) (レス) @page26 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - えめっちゃ続きが気になる〜!!神作品2個目、そして更新ありがとうございます!これからも頑張って下さい!体調には気をつけて。 (12月10日 6時) (レス) @page16 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月6日 1時