第五幕 -己の進むべき道- ページ22
旅人side
「ぷはぁ!このサイダーすっごく美味しいぞ!」
キラキラと目を輝かせるパイモンに、フラッドさんは『それは良かった』と静かに微笑んだ。
彼の作ったサイダーはベリーの香りがはっきりと感じて甘酸っぱく、それでいてさっぱりとしたものだった。流石はワイナリーに関わる人だ。
「このサイダーの水って、お前の水元素で出した水なんだよな?」
パイモンがサイダーをじっと見ていると、フラッドさんは食べていたハニーソテーを飲み込んでから頷いた。
『そうだ。訓練や仕事の合間に自分なりに特訓して、元素力に混じるアビスの力を多少制御できるようになったんだ。無闇やたらに溶かしてしまうのもいけないからね』
彼はそう言って苦笑した。『最近上手く出来るようになったんだ』と言っているけど、それって凄い事だと思う。
「(今までやっていた事を加減するって、結構難しいのに……)」
慣れていたものを制限して使う。それは何とももどかしくてやりにくいだろう。それでもフラッドさんはしっかりと使いこなしているんだ。
自分の利便さより、彼は周りへの被害を考えてその選択を選んだんだ。
「フラッドさんは凄いな…」
だって彼はその行為を、"誰かを守りたい"という思い一つでやっているのだから。
『そんな事無いよ。こうして飲み水ぐらい無害な水に出来るようになったのはつい最近だし、まだまだ課題は山積みだからね』
彼はそう言って、空になったお皿の上にフォークを置いた。
『ただ出来る事を一生懸命頑張っているだけだ。それぐらいしか僕には出来る事が無いから』
…出来る事を、一生懸命頑張る……。
「(フラッドさんも、一歩ずつ前に進んでるんだ)」
俺も負けてられないな…。蛍を探す事も、この世界の問題を解決する事も、彼のように進み続けないといけない。
どんな問題が出てきても、立ち向かえるように。
「…俺も、頑張りたい」
パチパチと燃え上がる焚き火を前に、俺は真っ直ぐ彼の紺色の瞳を見つめた。
「俺も……フラッドさんみたいに、頑張りたい」
『…そうか』
彼が微笑む。その笑顔はとても嬉しそうだった。
『君なら出来るさ。だって君は、僕の心に勇気をくれた人なんだから』
……え?
「そ、そうなの?」
『そうだとも。君の言葉が僕を動かしたんだ。だからきっと君なら出来る。強くなって、大切な人を守り通せるようになれるよ』
………そっか。
「そうだといいな」
そう言って笑うと、彼はふわりと柔らかな笑顔を浮かべた。
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九龍(プロフ) - 暁月臨さん» コメントありがとうございます!風邪をひかない内に更新しますので、服を着る準備もしてくださいねー! (3月28日 10時) (レス) @page38 id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - あ…あ…尊いです語彙力なくて申し訳ないですけど本当に好きです…(脳死)更新全裸土下座で待機させていただきます…!!! (3月28日 4時) (レス) @page38 id: efeff932b9 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - もにもちさん» これからディルックさんはどうなるのか…楽しみにして頂けると嬉しいです!フラッド君は今張り切ってますので絶好調ですね!これからも戦い続けますよー!適度に休んだりしていますのでご心配なくー!ですがお声掛けして下さりありがとうございます! (12月23日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - いやぁ、、、ディルック様気付き始めましたねぇ、、ふふふ、、、フラッド君強すぎじゃありませんこと?もう大好きなんですけど、まじで。はい。、、、ほ、本当に大丈夫ですか?体調とか時間とか、、、理由はなにかれ、なんであれ自分の体を労ってあげてください!! (12月23日 21時) (レス) @page26 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - えめっちゃ続きが気になる〜!!神作品2個目、そして更新ありがとうございます!これからも頑張って下さい!体調には気をつけて。 (12月10日 6時) (レス) @page16 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月6日 1時