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第四幕 -アカツキワイナリー- ページ15

ディルックside

彼が気にかけていた葡萄棚の葡萄は、文句が無い程出来の良いものだった。今までで一番の出来だと言ってもいいだろう。
だけど彼は下を向いて顔を暗くする。自信を持てないのか、彼の言葉にも気持ちにも後ろ向きな影が差していた。

それはきっと彼の過去が原因だろう。同胞から"出来損ない"と罵られ迫害された過去が、彼の足枷となっているように思えた。

「(彼は自分が何も出来ない者だと思っているんだろうな…)」

そんな事は無い。君は自分が思っている以上にできる人間だ。もし自分はそう思えないと言うのなら、僕が代わりに言ってあげよう。

「君の不安はよく分かる。でも誰だって最初は右も左も分からないんだ。知識を身に着け、経験を積み、失敗してもそれを乗り越えて成功へと至る。そうして過ごしていく内に、技術はいつの間にか身についていくものなんだよ」

近くの木箱に置いてあった葡萄鋏を手に取り、葡萄を一房収穫する。瑞々しい房から一粒葡萄の実を取ると、彼の前へと差し出した。

「君が気にかけた葡萄だ。食べてみるといい」

彼は葡萄の実を指先で摘み、恐る恐る口に含んだ。そして彼は次第に紺色の瞳を大きく見開いて、驚きに目を輝かせた。

『美味しい…!』
「だろう?」

僕も一粒取って食べてみると、甘くて瑞々しい葡萄の香りと味が口の中いっぱいに広がって、とても美味しかった。

「こんな美味しい葡萄を作ると思うと、わくわくしないかい?」

自分の作った物で他者を笑顔に出来る。それはどんなものであれ素晴らしい事だ。
嘗て父さんが僕に言い聞かせたように、僕は彼に言葉を紡いでいく。僕が教わった時のように優しく、一言一言を丁寧に並べて。

『……ディルック』

彼は指に付いた葡萄の汁を舐め取ってから、明るい表情で僕を真っ直ぐ見つめた。

『上手く出来るか、分からないけれど……っ、……やってみたい……!』

……嗚呼、何だか……過去を見ているような気分だ。

「勿論いいとも」

懐かしいな。父さんとガイアと三人で葡萄を食べ合って、それがとても美味しくて……。

『……ディルック?』

不思議そうに此方を見る彼に、僕は苦笑して「何でもない」と答えた。

「後で申請を通しておくよ。明日からトゥナーさんに作業を教わるように」
『分かった…!』

手にした葡萄は後で二人で食べよう。何でもない話をしながら、ゆっくりと。


そう、あの時のように。

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九龍(プロフ) - 暁月臨さん» コメントありがとうございます!風邪をひかない内に更新しますので、服を着る準備もしてくださいねー! (3月28日 10時) (レス) @page38 id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - あ…あ…尊いです語彙力なくて申し訳ないですけど本当に好きです…(脳死)更新全裸土下座で待機させていただきます…!!! (3月28日 4時) (レス) @page38 id: efeff932b9 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - もにもちさん» これからディルックさんはどうなるのか…楽しみにして頂けると嬉しいです!フラッド君は今張り切ってますので絶好調ですね!これからも戦い続けますよー!適度に休んだりしていますのでご心配なくー!ですがお声掛けして下さりありがとうございます! (12月23日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - いやぁ、、、ディルック様気付き始めましたねぇ、、ふふふ、、、フラッド君強すぎじゃありませんこと?もう大好きなんですけど、まじで。はい。、、、ほ、本当に大丈夫ですか?体調とか時間とか、、、理由はなにかれ、なんであれ自分の体を労ってあげてください!! (12月23日 21時) (レス) @page26 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - えめっちゃ続きが気になる〜!!神作品2個目、そして更新ありがとうございます!これからも頑張って下さい!体調には気をつけて。 (12月10日 6時) (レス) @page16 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月6日 1時

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