第四幕 -アカツキワイナリー- ページ14
フラッドside
トゥナーさんとの話もまとまり、その後ガイアと暫く近況を互いに話して別れた後、僕はそのままの足でトゥナーさんが言っていた葡萄棚の様子を見に行った。
『…本当だ……』
一目で分かる。この葡萄棚にある葡萄だけ明らかに立派になっている。色艶は勿論、実の大きさに張り具合など全てが段違いだ。
何で突然……僕はただあの時、萎んでいく実を手に取っただけなのに……。
『(無意識下で元素力を使ったとしても、溶けていないのはおかしい……)』
僕の水は触れたものを溶かす筈だ。なのにこの葡萄は生き生きとしている。僕の元素力だとしても、どうしてここまで無事に成長したんだ……?
……もし、僕の水を無害なものに変える事ができるのなら……この現象は訓練に使えるんじゃないか?
『(流石に葡萄棚は使えないけど、花を植えてやるぐらいなら……)』
無差別な融解を起こさずに元素力を操れるかもしれない。敵と味方を選別する事も……。
『……よし』
明日モンド城下に花の苗を買いに行こう。裏の空き地なら植える場所もある筈だ。
僕の元素力にはアビスの力に由来した何かしらの力が働いている気がする。その力の調整さえできれば、きっと花を枯らす事無く成長させる事が出来るだろう。
少し可哀想だけど…花を生かすも殺すも僕の成長次第だ。
『(大丈夫、出来る筈だ)』
ちゃんと向き合えば、力はきっと応えてくれる。
「フラッド」
『…!ディルック…!』
声のした方を見ると、一階の執務室の開け放たれた窓の向こうに、真っ白なベスト姿のディルックが居た。
「そっちに行ってもいいかい?」
『あぁ』
頷けば彼は一度執務室に戻って窓を閉めた。待っていれば足音がワイナリーの扉の方から聞こえてきて、真っ赤な髪を風に遊ばせながらやって来る彼の姿が見えた。
「何をしていたんだい?」
『トゥナーさんから僕が気にかけていた葡萄がよく育っていると聞いて見に来たんだ』
「…確かに見事な出来だな。ここまで大きく育ったのを見るのは久しぶりだ」
彼は葡萄の房を手に取って眺める。感心したように「凄いな…」と呟く彼の横顔は、童顔なのもあって少しだけ子供っぽく映った。
「道理でトゥナーから管理の申し出が来た訳だ…」
『…!もう君の耳に入ったのか』
「まぁね。…で、君はどうしたい?フラッド」
僕?……僕は……。
『……やりたいけど、不安…かな』
上手く出来るかどうか、不安でしかないんだ。
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九龍(プロフ) - 暁月臨さん» コメントありがとうございます!風邪をひかない内に更新しますので、服を着る準備もしてくださいねー! (3月28日 10時) (レス) @page38 id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
暁月臨(プロフ) - あ…あ…尊いです語彙力なくて申し訳ないですけど本当に好きです…(脳死)更新全裸土下座で待機させていただきます…!!! (3月28日 4時) (レス) @page38 id: efeff932b9 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - もにもちさん» これからディルックさんはどうなるのか…楽しみにして頂けると嬉しいです!フラッド君は今張り切ってますので絶好調ですね!これからも戦い続けますよー!適度に休んだりしていますのでご心配なくー!ですがお声掛けして下さりありがとうございます! (12月23日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - いやぁ、、、ディルック様気付き始めましたねぇ、、ふふふ、、、フラッド君強すぎじゃありませんこと?もう大好きなんですけど、まじで。はい。、、、ほ、本当に大丈夫ですか?体調とか時間とか、、、理由はなにかれ、なんであれ自分の体を労ってあげてください!! (12月23日 21時) (レス) @page26 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - えめっちゃ続きが気になる〜!!神作品2個目、そして更新ありがとうございます!これからも頑張って下さい!体調には気をつけて。 (12月10日 6時) (レス) @page16 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月6日 1時