君の事だけで天候すら変わる【ヌヴィレット】 ページ45
ヌヴィレットside
彼は自由にこの街を飛び回る。空を駆ける鳥のように。
私の恋人はメロピデ要塞の元囚人。今は子爵の地位を得ているが、彼が要塞から真に自由の身として出る事は無い。
だからだろうか?彼はこのフォンテーヌ廷に来る度に、空のよく見える屋根上や高い場所に居る事が多かった。
「あっ、おはようございますヌヴィレット様!」
「ご機嫌よう。一つ尋ねたいのだが、子爵殿を見かけてはいないだろうか?」
「子爵様なら向こうの建物の屋根上でお昼寝してましたよ!」
「そうか、感謝する」
私もすっかり外に出る事が多くなったものだ。彼を公務の合間の休憩時間に見つけ出すのが習慣になってしまったな。
普通ならばこの広い街の中で人一人見つけるのは大変だろうが、彼は私の姿をしているし、その服は陽すら返さぬ黒に染まっている。歩いているだけで目立つその姿のおかげで、人々に少し尋ねるだけで彼の居場所が分かるようになっていた。
「……彼処か」
メリュジーヌから聞いた建物を見上げると、やはりかなりの高さを持つ建物の上に私と同じ靴を履いた足が小さく見えた。
毎度思うのだが、彼はいつもどうやって上まで登っているのだろうか?身体を鳥などの飛行生物に変えているのだろうか?
……まさかとは思うが、壁を登って上まで行ったり……してるのだろうか……?
「(後で訊いてみるとしよう)」
まずは彼に会うのが先だ。
身を軽くして浮き上がり、彼の元へと飛んでいく。ゆっくりと屋根に着地すれば、案の定彼は私の姿で屋根の上に寝転がっていた。
「子爵ど」
声をかけようとした。だがその声は、途中で途切れた。
首が無い。真っ黒な服を纏う彼の首から上が消えていた。
顔のあった場所には水が飛び散っていて、テラテラと屋根を濡らし輝いている。その光景は、まるで、
"じゃあね、ヌヴィレット"
まるで、あの時のような__
「……子爵殿…」
ポツポツと雨が降り落ちる。横たわる彼の傍に座り、手を取って指を絡める。
何があったというのだ。私が居ない間に、何が……っ
「…誰かにやられたのか」
だとしたら、許す事など……
『…!?え、雨…!?』
「え」
お、起き…た……?
『…?ヌヴィレット、いつの間に…?というか、何だこの大雨は』
飛び散っていた水が、一瞬にして頭に戻った……。
「……死んだ、のでは……」
『は…?……あ゛、あー……すまない。その、寝惚けて擬態が、解けただけだ……』
…………え。
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orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時