《リクエスト》夜闇に紡ぐ言の葉-5-【リオセスリ】 ページ32
リオセスリside
『月が綺麗だな』
「は?」
メロピデ要塞の受付エリア。海底が広がる巨大なガラス越しに海を眺めていたら、ラヴィが突然そんな事を言い出した。
「案内待ちの冗談にしちゃあ、随分とロマンチックな言葉だな」
月ねぇ。月なんてもうすっかり見ちゃいない。この要塞で見れるのは深い海の底に差し込む光ぐらいだ。
「どこで覚えたんだ?そんな言葉」
『……水の上に居た時、家で覚えた』
ラヴィの声は、少しだけ小さかった。
黒い瞳が見るのは水の上。海底の上。きっと今頃浮かんでいるであろう月を眺めるように、ラヴィはじっと窓越しに見える筈も無い空を見上げる。
『好きな人に、伝える言葉だと聞いた。本当は、月が見える時に、言うものなんだろうけど、此処は月が見えないから』
『だから光の差してる時に言った』なんて言って、彼は目を伏せた。
家、か。コイツも元々は水の上に住んでいた濁水精霊だ。罪人じゃなきゃあ今頃、幸せな暮らしをしていただろう。
「……」
コイツが此処に来た時、まだ子供の姿で紛れ込んでいた時、あの時の目は、忘れない。
「……今ならきっと手が届くんじゃないか?」
『…?』
「月さ。お前はもうただの罪人じゃなくて、俺の信頼する子爵だ。囚人に罰を与え、看守を正し纏め上げ、水の上ですら罪を裁く氷の楔。それが今のお前だ」
ぐしゃりと頭を撫でてやると、ラヴィはじっと俺を見つめてきた。
真っ黒な目だ。だが俺はお前の本当の目の色を知っている。お前のその色は、月すら澄んで輝かせて見せるような。
「月にも周りにも、お前の気持ちは伝わるだろう。少なくとも、俺には届いた」
言葉足らず、手取り足取り教えて漸く立てるようになった、お前の言葉が。
「回りくどく言わなくても、お前の気持ちは伝わってるよ。ラヴィーネ」
一生懸命伝えたその言葉の全て、俺はしっかりと受け止めているとも。
『………好きだ、リオセスリ』
「ん、俺もだよラヴィ」
『好き』
「おう」
『好きだ』
「分かった」
『好き』
「あー……うん、分かった、分かったから一度落ち着いて」
『愛してる』
「おいこら、待て待て」
詰め寄るな詰め寄るな!こら、抱きついてくるんじゃない!
『ずっと好きだ、リオ』
「〜っ、勘弁してくれ……!」
仕事中だろうとお構い無しだな…!?
抱きついてハートを飛ばすラヴィの頭を撫でながら、小さく溜息をついた。
『月が綺麗ですねと言う主人公達』orchid様、リクエストありがとうございました!
ろくでもない知識は混ぜるな危険【アルハイゼン】→←《リクエスト》夜闇に紡ぐ言の葉-4-【トーマ】
48人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時