《リクエスト》髪の一房すら惜しい-5-【アルハイゼン】 ページ27
アルマside
「髪が伸びてきたんじゃないか?」
リビングで本を読んでいた時、そんな事をアルハイゼンから言われた。
『?そうだろうか?』
「俺より少しばかり前髪や後ろ髪が長い気がする。君も本を読んでいて鬱陶しいと思ったりはしなかったのか?」
『気にしていなかったな。見えづらくとも読めれば問題無いと思っていた』
言われてみれば前髪が目にかかりやすくなっている気がする。彼の指先が前髪を押し上げると、彼は「ふむ…」と声を漏らして持っていた珈琲の入ったカップを机に置いた。
「良ければ俺が髪を切ろうか」
『…!良いのか?』
「散髪ならカーヴェで散々練習している。出来ない事は無い。それにそのぐらいの多少の伸びなら、床屋に行かず自宅で切った方が手間も省けるだろう」
確かに一理ある。なら彼に任せるとしようか。
散髪……初めての経験だ。是非とも観察させてもらおう。
「君は俺の体のデータを引き抜いて肉体を構成していると言っていたから、成長しないものだと思っていたよ」
パチ、パチ、と鋏の音が鳴る。首元にタオルを巻かれて洗面台の前で髪を切られながら、アルハイゼンの問いに答えた。
『俺とて一種の生命体だ。肉体の老化は調整しているが、別に抑えなくてもいい部分…体毛や爪などは特に調整していないのでね。人間と同様に成長していくようになっている』
「ほぅ、なら君も日頃のケアが必要という事か」
『手間はかかるが、無駄なエネルギーを消費せずに済むだろう?』
彼の手が優しく髪を手に取り、静かな鋏の音が耳を打つ。ん……これは中々に良い気持ちだな。
『……君は俺の髪が好きなのか?』
「どうしてそう思う?」
『手つきが優しいからだ』
まるで柔らかい物を手に取るように触れるから、気になってしまった。
「…そうだな。俺と同じ髪なのに、どうも違って見えるものだから、つい見入ってしまう」
鏡に映る彼の顔を見ると、彼は珍しく柔らかな微笑を湛えていた。
その姿に、トクリと胸が跳ねた。
「君は本当に、興味の尽きない存在だ」
…………そ、うか…………。
「さ、次は前髪を………。……何故照れている?」
『何でもない』
「何でも無かったら照れはしないだろう。何故だ、理由を聞かせてくれ」
『早く髪を切ってくれ…!』
こんな自分の顔なんて、いっそ前髪で隠れてしまえばいい…っ!
『髪を切った主人公達』もにもち様、リクエストありがとうございました!
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orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時