《リクエスト》髪の一房すら惜しい-3-【トーマ】 ページ25
トーマside
フウマは人間じゃない。嘗て滅んだ魔神の残滓によって蘇った、生きた死体みたいな存在だ。
彼の身体は魔神の残滓と結びついた事で人ならざるものに変化してしまい、食事も睡眠も必要としない風の魔物へと変貌している。いつ魔神の怒りによって暴れ始めてもおかしくない存在だ。
それでもオレにとっては、たった一人の大切な弟なんだ。
「っ……」
風が吹き荒れる。暗い緑色の風が吹く中を、風を纏う蛇が駆け抜けていく。
オレが貼った炎のシールドで襲われていた村の人を守りながら暴風に目を細めていれば、風の晴れた先には血に塗れたフウマの姿が見えた。
「あ、ありがとうございます……っ。あの、あちらの御仁は……っ」
「オレの弟です。ご心配なさらず、貴方方はこの先の道を真っ直ぐ行って紺田村へ行って下さい。野武士の相手はオレと彼が引き受けます」
ご老人と若い女の子に優しく言い聞かせて送り出す。二人の姿が見えなくなった辺りで、『げほっ』と咳き込むフウマの声が聞こえた。
「フウマ…ッ！」
『っ……』
駆け寄れば彼は風元素の槍を地面に突き立てて激しく咳き込んだ。激しい戦闘の最中でその体には沢山の傷ができていて、揃いの長い髪は髪紐ごと千切れて短くなっていた。
「フウマ、もういいよっ、敵はもう居ないからっ！」
『フーッ……！フーッ……！』
ボタボタと血が滴り落ちる。懸命に声をかけても、彼は倒れる野武士を睨んだまま前へと踏み出す。
その体に鳴き声をあげて纏わりつく蛇が見えた時、オレはぎゅっと彼を後ろから抱きしめた。
「フウマ……っ、そっちに行っちゃ駄目だ……っ」
駄目、そっちは駄目だっ、お願いだ、戻ってきて……っ！
風が、止んだ。
「うわっ…！？」
ガクンっと膝から崩れる彼を抱き止めると、フウマは軽く咳き込みながら『疲れた…』って呟いた。
『……おでん、食べたい…』
「うん、うんっ、おでん食べようね。髪もオレがちゃんと整えてあげるからね……っ」
『……？何で泣いてるんだ、兄貴…』
「実の弟がボロボロで戦ってくれて、こんなに怪我をしてたらっ！誰でも泣くだろうっ！？」
『そういう兄貴もボロボロのくせに……』
「オレは良いのっ！」
良かった、戻ってきてくれた、オレの大切な弟。
ぎゅっと抱き締めたら『痛い』って頭を叩かれた。あぁ、こんなにばっさりと髪が短くなっちゃって……。でも短髪のフウマも格好良いなぁ……っ。
「帰ろう、フウマ」
《リクエスト》髪の一房すら惜しい-4-【鍾離】→←《リクエスト》髪の一房すら惜しい-2-【ディルック】
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orchid〜オーキッド〜 - 最高です！かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます！これからの活動もすっごく楽しみにしています！ (12月11日 13時) (
レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは！！天才ですね！！めっちゃうるっと来ましたよ〜！泣 はぁ！今日も頑張れそうです！更新ありがとうございます！これからも頑張ってください！！ずっと応援してます！あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます！もし何か分からないことあったら教えてください！ (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます！書かせて頂きます〜！ (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年12月3日 22時
