《リクエスト》髪の一房すら惜しい-2-【ディルック】 ページ24
フラッドside
闇夜を駆けていく。手にした大剣に水を纏わせ、目の前に群がるヒルチャールへと刃を振り下ろす。
横薙ぎの一閃は盾を持つ小型のヒルチャールを吹き飛ばし、その後ろに居るヒルチャール暴徒の振り下ろす斧を跳躍して躱す。
月夜に己の纏う群青のコートが舞う。ふわりと宙に舞い踊る身体が地面に落ちる前に上体を捻り、暴徒の顔目掛けて水のナイフを数本投擲すれば、暴徒の仮面を割り砕くように深々と水の刃が突き刺さった。
「後ろだフラッド!」
着地と同時に聞こえたディルックの声にすぐさま地面につけるように身を屈める。
僕の頭上をもう一体の暴徒の斧が横切っていく。ブツリと何かが切れる音が聞こえた瞬間、真正面から飛来した炎の鷹が暴徒を包み焼きながら吹き飛ばした。
「大丈夫かい…!?」
『あぁ、問題無い』
ナイフを突き刺した暴徒が音を立てて倒れるのを確認しながら立ち上がる。パチパチと燃える炎の音と深淵の水が肉を溶かし焦がす嫌な音を聞いていれば、真っ赤なコートを纏うディルックが此方に駆け寄ってきた。
『お疲れ様ディルック。さっきはありがとう』
……?どうしたんだい?顔色が悪いけど……
「な……か、髪が……っ」
『髪?……あぁ、先程の斧の一撃で持ってかれてしまってね』
大剣を掻き消しながら軽くなった後頭部を押さえると、手のひらにははらりと数本の髪が纏わりついた。どうやら髪留めと共に髪を切られてしまったみたいだ。
『怪我はしていないよ。そんな心配しないで…』
ギュッと抱き締められる。カランと落ちる大剣の音が聞こえて、痛いぐらいディルックが抱き締めてきて。
「僕がもっと、早く対応していたら……っ」
悔しそうに呟くディルックの声は、何故か震えていた。
「君が僕とお揃いだって自慢していた、綺麗な髪だったのに……っ」
『また伸びるから大丈夫さ。ほら、早く帰ろうディルック』
ポンポンと背中を叩くと、ディルックはゆっくりと僕から離れる。良かった、落ち着いてくれたかな。
ザクッ
『…えっ』
彼は突然大剣を手に取ると、器用に自分の纏めた髪をその場で切り落とした。
『な、何を…っ!』
「これでお揃いだ」
はらりと落ちる真っ赤な髪を惜しむ事すら無く、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「帰ったらちゃんと整えてあげるからね。また一緒に伸ばそう」
『……はぁ…、全く。君は本当に僕が好きだな』
「当たり前だ」
お互いの短髪姿を見合ってクスクスと笑いながら、手を繋いで帰る事にした。
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orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時