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いつか訪れる日を描く【鍾離】 ページ22

鍾離side

花が見たい。ずっと昔から、劉斗はそう言って遠くに広がる花畑を眺めていた。

『俺が触れれば燃えてしまうだろう?だから花畑を歩く事すら出来なくて悲しいんだ』

未だ俺達が戦争の中、つかの間の平和を満喫していた時、フォルファクスはそう言って寂しげに笑っていた。


「着いたぞ、劉斗」

誰も知らない仙境。俺達だけの場所。あの日、若陀と俺とお前で、三人だけで作った場所だ。
黄金の花が咲き乱れ、温かな金色の太陽が世界を照らす。お前はいつも向こうにある小さな家からこの花畑を眺めていたな。

『……此処、は………』
「嘗て、お前の為に若陀と共に作った仙境だ。花を見たいと言っていたお前の願いを叶えようと、試行錯誤して作ったんだ」

地脈を弄り、いつまでも美しい花が咲き乱れるようにと何度も何度も研究した。俺と若陀が顔を合わせて眉根を寄せながら悩む姿を見て、お前はとても楽しそうに笑っていたな。

花畑の中を歩いていく。芳しい香りが一歩踏み出すだけで広がり、金色の花弁が舞い上がる。
滴り落ちる彼の血の流れが緩やかになった頃、俺は花畑の中に座り、近くにある一輪の花を手折って彼に渡した。

「持ってみろ」
『……』

差し出した花を、彼は手に取った。力なく花を手にした彼は、霞んで色の薄れた赤い瞳を、嬉しそうに細めて微笑んだ。

『あぁ……いい、香りだ……。おれが、持っても……もえない……』
「そうだ。お前が持っても燃えはしない。ずっと此処に咲き続けるんだ」
『……ふふ……そうか、…そう、か……』
「……劉斗」

後頭部に手を添え、優しく頭を撫でる。彼の唇に口付けると、冷たい血の味がした。

『………モラクス……』
「…何だ……?」

彼は苦しげに咳き込んだ後、涙を浮かべながら、笑った。


『ありがとう』



「………お前の為なら、造作も無い事だ」

黄金の花びらが舞う。花の香りが俺達を包む。
彼の手にした花の花弁が一枚落ちると共に、彼の手がゆっくりと、落ちた。

「……此処は静かだ。ゆっくり休むと良い」

そしてまた起きたら、俺と共に語り合おう。この花畑を駆け回るのも楽しいだろうな。
笑顔を浮かべて、はしゃぐお前の姿を見ながら。



何千年経とうと、二度と起きる事の無いお前を、ずっと想い続けている。

《リクエスト》髪の一房すら惜しい-1-【リオセスリ】→←いつか訪れる日を描く【鍾離】



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orchid〜オーキッド〜 - 最高です!かなり無茶なリクエストしたのにも関わらずクオリティ高いものを用意して頂いてありがとうございます!これからの活動もすっごく楽しみにしています! (12月11日 13時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - ヤァバァイもう天才ですかあなたは!!天才ですね!!めっちゃうるっと来ましたよ〜!泣 はぁ!今日も頑張れそうです!更新ありがとうございます!これからも頑張ってください!!ずっと応援してます!あ、体調には気をつけて。 (12月11日 6時) (レス) @page44 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
orchid〜オーキッド〜 - 九龍さん» ありがとうございます!もし何か分からないことあったら教えてください! (12月10日 21時) (レス) id: 47c56abe73 (このIDを非表示/違反報告)
雷デット - ありがとうございます!! (12月10日 19時) (レス) id: d5e1296c27 (このIDを非表示/違反報告)
九龍(プロフ) - 雷デットさん» リクエストありがとうございます!書かせて頂きます〜! (12月10日 17時) (レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年12月3日 22時

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