散らばる星はその地で輝く -5-【短編集】

《リクエスト》印に刻む愛の意味-2-【トーマ】 ページ17

フウマside

「痛ったぁ！？」

煩い。この程度の手当てで声をあげるな。
バチンッと湿布を背中に叩きつけて、腕の切り傷の消毒をしていく。「うぅ…」と泣きそうな声を出す兄貴は無視だ無視！

『(全く…海乱鬼程度に手こずるなんて……情けない)』

どうやら旅人と稲妻の探索中に運悪く海乱鬼に遭ってしまったらしい。二人共何とか無事で戦い抜いたみたいだけど、この通り兄貴は前線に出て旅人を守ったりした所為で怪我だらけだった。

特にこの背中の青痣！刀の柄で殴られたのか知らないけど、安々と背中を取られるなんてどうかしてるだろ。

『ほら、終わったよ兄貴』
「ありがとう…。……はぁ〜…！本当に運が悪かった…」
『全くだ。言ってくれればオレも同行したのに』

社奉行の警護を主としてるけど、逆に言ってしまえば警護以外は何もする事が無い。別に他の奴に警護を任せて出歩いたって若に叱られもしない身だ、旅人に同行するのだって気軽にできる。それなのに……。

「駄目だよ。もうフウマを痛い目に遭わせたくないからね」

……そればっかりじゃないか。
いっつもそう言ってオレは仲間外れだ。オレだって兄貴と一緒に旅をしたいのに。

『(やっぱりオレ、足枷になってるのかな)』

そう思うと、ズグリと胸の奥が痛んだ。

『兄貴…』
「ん？」

包帯が巻かれ、湿布が貼られた背中。兄貴の背中。俺の事を守ってくれる背中に擦り寄ると、包帯の上から軽く口付けた。

「どうした？」
『……』

ぐしゃりと頭を撫でられる。肩越しに見えた兄貴はにっといつものように笑っていた。
………なんかムカつく。

『んっ！』
「痛っ、たぁあっ！？何するんだよフウマッ！」

思いっきり首筋に噛みつくと、兄貴は悲鳴をあげて涙目になる。ちょっと怒り気味の兄貴の首に付いた噛み跡にキスをしてから、オレはすぐさまその場から逃げた。

「あっ！こらフウマ！逃げるんじゃないっ！こらーっ！」
『怪我してくる兄貴へのお仕置きだよ！』

兄貴がオレを連れて行かないからそんな怪我をするんだっ！


だから次は、俺も一緒に連れてってね。兄貴。


社奉行の中を走り回って、若にしこたま怒られるまで、オレは兄貴から逃げ続けた。



《背中・首及び首元へのキス…愛情の確認・執着心》

《リクエスト》印に刻む愛の意味-3-【リオセスリ】→←《リクエスト》印に刻む愛の意味-1-【鍾離】

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