いつもの日課、しやしょうか ページ8
沖田side
俺達が合図無しに集まれる場所は、此処しか無ぇと思った。
俺と総鬼が出会い、俺と総鬼が付き合いを始めた場所。全ての歯車が回り始めた場所。
だから、テメーも来ると思ってた。
「一対一の真剣勝負だ」
純白の刀を構える総鬼の背に浮かんでいた夕日は既に落ちた。代わりに出てきたのは、俺が散々忌み嫌った真っ白な満月。
『…』
その月を背に、赤から金へと変わった瞳が真っ直ぐ向けられた。涙の痕を残すその顔から表情が消え、虚ろな黄金が俺を獲物として捉えたらしく、僅かに細められる。
「かかって来いよ、総鬼」
いつも通りの、道場での稽古だ。
俺と総鬼は、ほぼ同時に飛び出した。
交差する黒と白が激しくぶつかり合う。刃越しに睨みつける黄金の瞳に口角を上げれば、互いに後ろに引き、無数の斬撃を繰り出した。
その様は、言うなら真空刃。縦横無尽に飛び交う互いの刃を避け、打ち込み、そしてまた避けながら相手の身体を斬らんと狙いを定めて剣を振るう。
…ほんと、太刀筋まで俺にそっくりだってのに、どうして気づかなかったんでィ。…いや、違うか。
きっと俺ァ、気づいてたんだ。でも、総鬼が人斬りなんかじゃねぇと、何処かで否定していた。だから気づかなかった。
でも今は違う。コイツが総鬼だと分かった以上…っ
「はぁあっ!!」
もう、負けねぇっ!!
重い一撃を掻い潜り、懐に潜り込んで下から上へその胴を斬り上げる。総鬼は気づいて避ける為に後ろに下がったが、一歩遅れ刃が胸を掠った。
水色の着物を斬り裂き、中のシャツごと胸板を斬り上げる。赤い血が飛び散り、白いシャツにじわりと赤が滲んだ。
浅い…っ、まだコイツは動ける…!後ろに下がった総鬼は瞬時に俺に突っ込んできた。目視で確認出来ねぇ程の速度で迫った総鬼を捉えた時、脇腹に鉛のような足が叩き込まれた。
ミシッ…と微かに音が聞こえた瞬間、俺は隣の建物に背中から勢い良く突っ込んだ。木造の建物は埃を立てて崩れ、咳き込みながら起き上がった俺の喉を血が込み上げ、思わず吐き出した。
が、運良く月光の及ぶ範囲外だったらしく、追撃される事は無かった。影の中で立ち上がり、蹴られた腹に手を当てながら、ゾクリと込み上げる高揚に身を震わせる。
「強くなったじゃねぇか…っ!」
連れ戻しがいがあるってもんだ…っ!
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年6月15日 2時