もう一度、あの場所で ページ5
沖田side
屯所の縁側を歩き、門が見えてきた時、門前に土方さんが立ってるのが見えた。あんな所で…何してんだ？
「土方さん」
「…よぉ、目覚めたのか」
「もう動いていいのか？」と聞いてきた土方さんに頷いて、俺は口を開いた。
「そこ、退いてくだせぇよ」
「何処行く気だよ。…ま、検討はついてるけどな」
煙草の煙を吐き出し、ツンとした煙の向こうで細められた青灰色の瞳が俺を射抜いた。
「…勝てるのか？」
「…意地でも勝つしかねぇでしょーが」
アイツを連れ戻すには、あの刀を壊すしかねェ。でもあの刀は一回触れたら終わりだ。戦うにはそれなりに頭使わねぇと無理だろう。……でも、
「今度は…死んでも連れて帰るつもりでさァ」
アイツが戻ってくるなら、俺は瀕死になってでも帰って来てやらァ。例え骨が溶けるような毒を受けても、絶対に。
「…そうかよ」
土方さんは小さく笑って、懐から何かを取り出し俺に渡してきた。受け取って見ればソレは、黒い柄の短刀だった。
「コイツは…？」
「俺の誕生日祝いに、総鬼が贈ってくれた宝物だ。…持って行け。アイツを連れ戻せるのは、テメーしか居ねぇ」
…ほんと、そんな目ぇするぐれぇなら付いて来ればいいのによ。
俺はその短刀を仕舞って、一礼して隣を通り抜ける。門を押し開けてから、肩越しに土方さんに言った。
「…一番隊、行ってきやす」
「…おう」
行って来い、そう聞こえた気がした。俺は笑って門を閉じる。人の居ねぇ町は静かで、それでも変わらぬ町並みで俺を迎えた。その荒廃した町の中を歩いていく。
俺達が何も無しで集まれる場所は…あそこしか無ぇ。確信にも近いものを胸に抱きながら、アイツの大切な真っ黒な刀の柄を優しく撫でた。
待ってるだけはもう御免だ→←ほっとけねェ…！アイツァ…きっと
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年6月15日 2時
