終章 ページ27
総鬼said
「ね、総鬼。お前は未来ってのを考えた事はあるかィ」
らしくない質問をしてるな、なんて思いながら町中を歩く。今日も変わらない江戸の町を、黒い隊服を纏いながら総悟と歩いていく。
『そうだなァ……未来なんざちっとも考えた事無かったが、最近はよく考えたりするなァ』
ポケットに手を突っ込みながら歩く総悟が「へぇ〜?」と俺を横目で見てくる。その赤い瞳に好奇心の色を感じ取って、俺は肩を竦めた。
『些細な事だ。明日は何しようとか、そういう未来ですぜ』
「…そのもっと先は?」
『もっと先?……う〜ん…』
もっと先か……。…そうだなぁ……。
『…分かんね。でも、俺ァどんな未来でも総悟と一緒に居てぇなァ』
そう言って歩いていく。あぁ、そうだな。俺はどんな事があっても総悟と一緒に居たいなァ。
もしかしたら、何処かの任務でヘマして死ぬかもしれねぇ。先の未来で俺達二人死ぬ運命だとしても、二人揃って笑う世界でも、お前だけが生きる世界でも、俺はお前の心に残る程の存在で居たい。
これから辛い事もたくさん起こるだろう。悲しくて苦しくて血反吐を吐きそうな思いをするだろう。でも、それでも俺ァ……お前の隣で生きて死にてぇなァ。
『死ぬ時は膝枕してくれな、隊長』
「何死ぬ話してんだ、ぜってぇ死なねぇだろテメーは」
『俺頭吹っ飛ばされたら死んじゃいます〜』
「そりゃ誰でも死ぬだろーが。もっと明るい未来を描きなせぇよ」
『だって俺明らかにテメーより長生きするし』
「うぐっ……そ、そうだけど……」
…でもそうだな、明るい未来の話をするか。
『ま、お前が爺ちゃんになっても、死んで生まれ変わっても見つけてやるよ』
こんなふてぶてしくて、ドSで、憎たらしい奴早々居ねぇだろうから。すぐ見つかるだろうなァ。
桜が散り始めた少し温かい日。ふわりと舞い落ちたその花弁を手にとって、総悟に渡してやった。
『約束だ。お互い、死ぬ時は隣で死にやしょ』
「……ん、約束な」
ね、俺…憶えてるんですぜ。総悟がどれだけ頑張ってくれたのか、全部。
『…ありがとな』
「ん?」
『いや、何でもねぇよ』
桜の散る少し荒れた道を歩く。あの時からだいぶ伸びた髪を手にとって、優しく口付けた。
『愛してるぜ、総悟』
「なーに今更な事言ってんだ。俺の方が愛してるわ」
そう言って互いに笑って。左手の薬指に嵌る指輪には、五年経っても幸せな俺達の笑顔が映って見えた。
fin.
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年6月15日 2時