月夜の作戦は海と共に沈む ページ25
総鬼side
黒煙を吐き出す船から小型のボートで脱出する。ボートの上で簡単に海水を浴びた箇所を手当てしてもらいながら、沈み行く舟をぼんやりと眺めていた。
それにしても、あんなモンよく持ってきたな。
『なァ、総悟』
「ん〜…?」
『寝ようとすんじゃねぇアホ。…よくバズーカ持って行こうなんて思ったな』
船上じゃあんな重火器ぶっ放せば大惨事に繋がる恐れがある。だから持って行こうなんて普通は思わねぇんだが…
「あ〜…ちょいと夢見てな」
『夢?』
総悟は目を逸らして頬を掻く。話せとばかりに目を細めて睨めば、総悟は肩を竦めた。
「まァ…アレだアレ。似たような感じの夢の中でテメーの姿が無かったから、何かあると思ったんだよ。それに瓦礫も映ってた。だからもしかしたら…と思ってな」
『何だそのピンポイントな夢は』
「煩ぇ黙って"そうだったんだー"で済ませろィ」
総悟はそう言ってアイマスクを付け始める。だから寝るなって言ってんだろィ。
「ま、今回は総悟の手柄だ」
土方さんがそう言って俺を見た。
「…あのままじゃテメーを助け出せずに脱出してた」
『構いませんぜ。俺一人の命より全員の命の方が大切でさァ』
「そうだが、総悟からしたらそうとはいかねぇ。お前はコイツの嫁さんなんだからよ」
そう言って総悟を見る土方さんは、何処か安心したように息を吐いた。
「…目の前で死ぬような真似、すんなよ」
『………了』
辛い姿は見せるな。そう言いたいんだろうな、土方さんは。
『(大丈夫でさァ、土方さん)』
俺が死ぬ時は、俺の死に場所は、総悟の隣って決まってんだ。それ以外の場所で死ぬ事はしやせんよ。
満月の昇る暗い夜の海上で、静かな波の音と共に沈んでいった船を見届ける。その時浮かんだ月は、いつにも増して黄金に輝いていた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年6月15日 2時