生き延びる為に走れ！ ページ23
総鬼side
激しく揺れる船内のあちこちから、爆発音と火の手が上がった。その中を一心不乱に走り抜け、戦っていた隊士達に逃げろと声をかけながら出口を目指す。が、
「此処もかよ…！！」
出口は四つ、その内三つが瓦礫で封鎖されていた。
『きっとエンジンに引火したんだ。このままじゃ俺達全員海の藻屑だぞ』
「ふざけんなよ…っ、他の出口は！？」
『東の一個しか無ェ。でもそこは火の海だ』
幾ら俺でも、あの火の中は走れねェ。
「くそっ！！」
壁を殴り、悔しげに舌打ちする総悟。こうしている間にも海水は入ってくるし、道も塞がれていく。どうしたら…
『…待て』
いい事を思いついた。
『甲板目指せ、総悟』
「はァ…？あそこはとっくに道塞がれてただろーが」
『いや…』
道は確かに無ぇが、方法はある。
『俺が道作ってやらァ。行くぜ』
「…まさか、テメー…」
気づいたのか総悟が驚いて俺を見る。その表情は、次第に呆れを含んだ笑みに変わった。
「…この馬鹿力が」
『感謝しやがれィ。海の藻屑ルートは回避出来るんだからよ』
時間が無ェ。一刻も早く甲板目指して走らねぇと。
俺達は甲板の方に走っていく。血塗れの通路をお構い無しに走り抜け、死体を踏みつけて力の限り走る。暫くして甲板に続く通路に出た。が、案の定通路は崩壊した天井の瓦礫で塞がれている。
『こっちだ！』
俺は隣の部屋のドアを開け中に入る。そして通路側の壁に向かって、思いっきり拳をぶつけた。
放射状に亀裂が入り、次の部屋が先に見える。俺達は空いた穴を通り抜け、ドアを開けた。
「此処は…」
『やっぱな。上手く反対側に出れたみてぇだ』
通路の先に出れた事を喜んでる暇は無ェ。刻一刻と海水が入るこの舟はいずれ沈むだろう。その前に出ねぇと、俺も総悟もお陀仏だ。
真っ直ぐ道を進んで行けば、次第に俺がぶっ壊した扉が見えてきた。あそこに飛び込めば…！
「総悟！総鬼！」
『っ、土方さん！』
甲板から土方さんの声が聞こえた。俺達はその声の方に全力で駆ける。
その時、上から物音がした。嫌な予感がして、総悟の背中を思いっきり突き飛ばす。
その直後、俺の目の前に瓦礫が降り注いだ。
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年6月15日 2時
