些細な違いでも、切っ掛けになる事はある ページ21
土方side
始まったか…。怒声と刀の交わる音が響く船を見上げながら、俺は小さく煙を吐き出す。煙草を咥え直し、そのまま控えている部隊に指示を出した。
「二〜四は周囲を見張れ!五、六は船を囲め!蟻一匹逃がすな!」
俺の声に隊士達は忙しなく動き出す。と、不意に山崎が俺の所に来た。
「あの、副長…」
「どうした?」
「その…沖田隊長から黙ってろって言われたんですけど…その」
何だよ…?はっきり言いやがれ。
「…ア、アレを持ってきてしまって…」
山崎はそう言ってパトカーの方を見る。そこには…確かにアレがあった。
「おい、何でアレ持ってきてんだよ!!」
「す、すみません!でも沖田隊長が無断でも持って行くって聞かなくて…」
たくっ、あの野郎…。呆れて溜息が出る。が、ちょっと待てよ?
総悟は無断で持って行こうとした…そんなの初めてだ。いつもなら何かしら言葉をかけて持って行くアイツに限って、無断で…?
「…いや、いい」
何か引っ掛かる。まさかアイツは、何か感じ取って…
「ソイツを総悟の元にまで届けろ。斬られないようにな」
「え、えぇっ!?いいんですか!?」
「あぁ。…持って行きたいと駄々捏ねたんだろ?なら使わせてやれ」
折角だ。どうせなら派手にぶちかましてやれ。
「分かりました。…どうなっても知りませんからね!?俺は!」
ま、そう言うなって。苦笑して山崎を見れば、「もう…」と仕方無いとばかりにアレを担いで船に走っていく。
俺は咥えていた煙草を灰皿に捨て、船の方に向かって歩き出した。包囲は既に出来ている。後は中で…始末するだけだ。
「(無断で引っ張り出して来たんだ、ちゃんと使えよ…?)」
何考えてるか知らねぇが、しくじったら…容赦しねぇぞ。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年6月15日 2時