血に沈む声 ページ13
沖田side
振り上げた刃が、俺の頭に振る。その光景を最後に意識を手放すつもりだった。
でも…
"斬れ"
「…!」
アイツの声が聞こえて、俺は反射的にその胸目掛けて突っ込んでいた。
『…ごほっ』
ゴボリと吐き出された血が俺の顔を濡らす。俺は、目の前の光景が信じられなくて、息を呑んだ。
「…総鬼…?」
総鬼の胸を短刀が貫いていた。心臓を狙った刃は真っ直ぐ胸に潜り込み、傷口から鮮血が零れていた。
その柄を握るのは、紛れもない、俺の手だ。
「な、何で…」
何で、俺ァ…こんな…っ
咄嗟に手を離しちまって、目の前で膝をつく総鬼を呆然と見つめた。その苦しげな姿を見て、漸く金縛りから抜け出せたように思わず駆け寄った。
「総鬼っ!!しっかりしろっ!」
『っ……い、てぇな……くそ……』
…!意識が、戻って…
総鬼は短刀を抜いて放り投げる。血が溢れる胸を押さえて、血を吐きながら俺を見て笑った。
『…格好悪ィところ、見せちまった……な…』
「馬鹿言ってんじゃねェ…!待ってろ、今その刀壊して『総悟…!』っ…!?」
ぐっと襟首を掴まれて額同士がくっつく。目の前の赤い瞳が、凛とした光を宿して俺を射抜いた。
『壊すより…、俺の、息の根を…止めろ…っ』
「…は……?」
な、何で…
『コイツァ…宿主が、死んだら…勝手に動かなく、なる…っ、朝になって、から…この刀を海に…』
「馬鹿言うなっ!!そんな事したらお前が『俺はもう死んでるんでさァッ!!』
総鬼の叫びに俺は怯む。総鬼は悲しげに、泣きそうな笑顔を浮かべた。
『頼みやすよ…隊、長…。俺を、楽にして…くだせェ』
……何で、何でそんな、縋るような顔するんだよ…そんな顔されちゃあ…っ
「……分かった」
転がっていた高定を拾い上げ、立ち上がる。短刀の刺さっていた傷から血が滲んで、ドクドクと痛んだ。その痛みは、まるで俺の心音を表しているようだった。
刀を構え、膝をつく総鬼の前に立つ。首に刃を添えると、総鬼はただ静かに、少しだけ微笑んだ。
『……ありがとな、総悟』
その声は、真っ黒な刀に鮮血と共に染み付いた。
14人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年6月15日 2時