肆拾陸:興味本位の行動 ページ47
実side
何か、見てたら触りたくなった。それだけの理由で、虎杖の胸をぺたぺたと触っている。
筋肉質だけど柔らかいな…そう言えば、いい筋肉は柔らかいってテレビで言ってた気がする…
『(今の俺の身体もこうなのか…)』
きっと覚醒したら別の身体になるんだろうな…こんな筋肉があればいいな……なんか今日疲れたから寝落ちる気しかしねぇんだけど……
「…あ、あの〜…榎森さぁ〜ん…?」
『…!悪ぃ』
はっと我に返って慌てて手を引っ込める。流石に引かれたよな…そう思って顔を上げると、
「っ…」
顔を真っ赤にした虎杖が見えた。
『……、お前顔赤いぞ』
「勝手に触ってきたのだぁれ!?」
別に赤くならなくてもいいだろ。真っ赤なままいそいそと着替える虎杖に思わず笑いが込み上げると、「榎森ぃ〜…」とジト目で睨まれた。悪かったって。
『おら、ゲームするんだろ?教えてくれよ』
「〜っ、そういうところだぞほんと!」
どういうところだよ。内心で笑いつつコントローラーを手にすれば、テキパキと虎杖がゲームの準備を始めた。
『…なぁ虎杖』
「ん〜?」
『俺が呪霊になっても、こうして遊んでくれるか?』
カシャリとゲームのソフトがセットされる。俺の隣に腰掛けた虎杖は、「勿論!」と明るく笑った。
「それにきっと、俺の方が早く死ぬからさ。逆に俺に付き合って欲しいなーって思ってる。少しでも思い出残しておきたいじゃん?」
『死なせるか馬鹿。その前に俺が封印してやる』
「そうなると…もしかして俺、調伏された呪霊として榎森の力になれ『ねぇな。第一お前は呪霊じゃねぇし』ちぇ〜!」
画面に映るゲームを見ながら、ふと俺は口を開いた。
『……暴走したら、頼んだ』
「ん?」
『俺はまだ自信が無い。今の実力じゃ統合しても全ての力を扱えない気がする。それに、暴走のリスクの方が大きいだろ。もし暴れたら、その時は俺を殺してくれ』
「……」
俺がなろうとしてるのは呪いだ。人の負の念から作られた存在が、ずっと善で居られる保障は無い。もし、もし俺が呪いに呑まれたら、俺は皆を傷つけるかもしれない。だから、
『覚悟は出来てる』
だからせめて、知っている人間の手で殺して欲しい。
「…分かった。でも、俺は絶対榎森を殺さないからな」
『………、ありがとな』
その言葉だけで、充分だ。
肆拾漆:いずれ死に逝く命ならば→←肆拾伍:休息はしっかりと取るべし
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時