肆:呪いより生まれし霊 ページ5
釘崎side
二人と分かれて廃工場に来てみれば、さっきの駅前からは想像出来ない静けさが辺りを包み込んでいた。
見た事無い配管やら建物やらが密集してるわね……一面灰色の山みたい。
「ほんと、人の居ない工場地帯って感じね〜…」
廃墟だからそりゃそうか。それにしても広いわね。私一人でコトリバコ見つけられるか?コレ。
……っていうか、
「(さっきから居るのよね……面倒くさ)」
釘と金槌を取り出して溜息をつく。背後に振り向けば、今来た道から嫌な気配が漂い始めた。
「出て来なさいよ。居るのは分かってんだよ」
こそこそ後尾いてきやがって……さっきからモロバレなのよ。
それでも反応せずに此処までやって来たのは、少しでも障害物の無い広い空間で戦いたかったから。
風の音も、自分の呼吸音も消えたかのような一瞬の静寂。それを破るように、
【イま゛、何時でて゛すkaあ?】
耳障りな雑音にも近い声と共に、呪霊が波のように押し寄せてきた。
「嘘でしょ……!?」
何この数っ!?尋常じゃない数居るんだけど!?
「(コトリバコってこんなに呪霊を引き寄せるモンなの…!?)」
だとしたら相当やばいモンじゃないっ!宿儺の指と同じ危険度なんじゃないのコレ!
考えてたって仕方が無い。押し寄せる呪霊を前に、私は手にした釘に呪力を込める。
じわりと呪力が広がっていく。炎のように揺らめく呪力を帯びた釘を、そのまま宙に投げた。
「"芻霊呪法"!」
金槌で釘を打ち付ける。振り切った金槌から放たれた釘は弾丸のように飛んでいき、前方に居た青黒く目玉が無数にある呪霊の眉間に突き刺さった。
途端に呪霊の波に穴が開く。釘の勢いを削げなかった呪霊がそのまま後ろに居た呪霊を巻き込み、波に穴を空けるようにして吹っ飛んでいった。
「さてと…」
探す前に、まずはゴミ掃除ね。
308人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時