弐拾参:巨大で大きな ページ24
虎杖side
5階、6階と上がっていく。歩く度にカツンッとコンクリートの床に足音が響いた。
さっきとは打って変わって呪霊が出てこなくなった。このマンションは12階建てで、今居るのは10階。あと2階上がれば最上階に辿り着く。
「…気をつけてな」
『……』
俺の声に先を歩く榎森が頷く。俺は少しだけ笑って、榎森の後について行く。
11階、此処にも何も居ない。4階で最後だったのか…?
「(だとしたら、下に居る伏黒と合流するか…?)」
今伏黒は上に来ようとする呪霊を食い止めている筈だ。上に敵が居ないなら、下から来る呪霊を祓いつつ合流すればいい。
「(一応12階まで上がろう。それで何も無かったら、下に戻ればいい)」
そう考えながら12階に上がる階段に足を乗せた、その時だ。
ズプンッと俺の足が地面に沈んだ。
「なっ…!?ぅわっ!?」
即座に反応した榎森が俺のフードを掴んで跳躍する。
踊り場に着地した榎森がフードを離して俺を降ろしてくれたけど、階段からは嫌な気配がゆっくりと人型になって立ち上がるのが見えた。
赤黒い肌に、筋肉質な体型。目の部分に口が二つ存在し、顔全体に目が無数についているソイツは、俺と榎森を交互に見た後、口元をニヤリと笑みに歪めた。
「やっとお出ましか…っ!」
『……』
呪力を拳に込めて戦闘態勢を取る。榎森も足元から黒い泥を出して威嚇するように呪霊を見ていた。
【区pxくれx09x2@、う23@う9】
意味不明な言語が口から漏れる。瞬間、両方の口から金切り声が大音量で放たれた。
「っ!?」
思わず耳を塞ぐ。それでも金切り声は指の隙間から侵入し、耳を破壊しようと鼓膜に衝撃を与えた。
「っ、この…っ!」
キィーンッと耳鳴りが頭を支配する。視界が曇り、激しい頭痛が頭を駆け巡る。
足元がふらついて、俺は耳を押さえながらその場に膝をついてしまった。
これじゃ上手く呪力維持できない…っ、それに、身動きが…っ!
俺の頬に黒い液体がぱたたっと飛び散った。金切り声の中、液体が飛んできた方向に視線を移す。そこには、
「っ、榎森…!!」
金切り声が発する音波の波によって、姿が崩れかけている榎森の姿が見えた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時