弐拾壱:噛み合わない三人 ページ22
伏黒side
翌日の朝10時。釘崎を除いた俺達3人は今、少し前に訪れた廃マンションの前に来ていた。
「此処で合ってるよな?」
「嗚呼、間違いない」
『……』
寂れた建物を見上げて小さく溜息をつく。
五条先生が言い残していった言葉に、少しイラつきが湧き上がったからだ。
「抜き打ちテストで誘き寄せられた呪霊の残党狩りなんて、何で俺達がやらないといけないんだ…そっちでやれ」
「まぁまぁ、先生だって暇じゃないんだしさ?それに釘崎だって任務で居ないし、これ出来るの俺達しか居ないし…な、榎森!」
『……』
…やっぱり反応無しか。そうだ、丁度良い。
「榎森、少し話があるんだが…」
昨日の事を話そうと榎森に声をかける。が、榎森は突然ぐっと足に力を込めて、軽々と2階のベランダまで跳躍した。
「っ!?」
突然の事に驚いていると、榎森が入った部屋から物音がして、直後入れ替わるように呪霊が外へ投げ飛ばされた。
ざっと見て四級の呪霊だ。蜥蜴みたいな身体で頭が2つあるその呪霊は、落下しながら細切れに崩壊して消滅していく。
「何突っ走ってんだあの馬鹿!」
突然すぎるだろ…!急にスイッチ入ったな…っ!?
すぐにマンションの中へ飛び込むと、1階には既に戦闘音を聞いて呪霊が湧き出ていた。
「"玉犬"!」
手を組み玉犬を召喚する。遠吠えをして唸る2匹と共に呪霊を睨みつけながら、遅れて入ってきた虎杖に背中越しに声をかけた。
「上行け!此処の奴らは俺が食い止める!」
「分かった!」
階段を駆け上がる足音が遠のいていく。俺は小さく息を吐いて、影の中から黒い刀を取り出して構えた。
上に行くにつれて呪力が大きくなっているように感じる。雑魚とはいえ、これ以上上に行った二人の負担を増やすわけにはいかねぇ。
「上には行かせねぇからな」
群がる呪霊に向けて、玉犬に「喰え」と指示を出した。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時