呪箱異譚 (ページ14)

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拾参：猜疑心と信用ページ14

伏黒side

「さ！紹介も終わったし、皆帰るよー！」

五条先生が意気揚々と先を歩いて行く。
ドッと疲れを感じながら、俺達は先生の後をついて行くように歩き出した。

「なぁ榎森、好きなモンとかある？俺は肉！」
『……』
「んで、運動とかもそれなりに好きかな！榎森は？インドア派？アウトドア派？」
『……』
「おい虎杖…」

怒涛の勢いで質問をする虎杖に声をかけると、虎杖は「ん？」と無邪気な表情で俺を見てきた。

「そんな連続で質問されたら困るだろ」
「あ、そっか。じゃ、榎森からも何か話してくれよ！」
「あのねぇ…知り合ったばかりで色々言われたって話せないっつーの！アンタ明るすぎない？」

釘崎が呆れたように溜息を零す。
俺は仲良くする以前に、コイツが本当に安全なのか疑問を抱いていた。

虎杖はあの性格だ。それに目の前で宿儺を押さえ込む場面を見ている。視覚ほど安心できる証拠は無い。
が、今回のコイツは違う。どうしても呪霊として疑いの目を向けてしまう。第一、言葉だけじゃ信用できない。

「……」

俺は先生が歩き出す前、少しだけ俺達に話してくれたコトリバコの話を思い返していた。

「"実の中にはどんな呪いも封印できる呪具があってね。その中に呪霊も封印してるから滅多な事じゃ暴走しないよ。まぁ見た目はこんなだけど、気にしない気にしない！"」

いや気になるんだよ…っ！
虎杖より不確定要素が多い不完全の受肉体だぞ？何が起こるか分かったもんじゃない。

「…俺はまだお前を信用できない」

ふと、言葉が漏れていた。

「虎杖には悪いが、俺はお前が暴走するんじゃないかと思っている。その危険性は少なくともあるしな」
「伏黒…それを言うなら俺だって」
「お前は目視で抑える所を見てる。その分少しだけ安心してるんだ。でも、コイツは違うだろ」

虎杖は顔を曇らせて俯く。悪いな、でも言わせてくれ。

「俺はまだ、お前を仲間だと思っても信用は出来ない。安心できない」
『……』

ソイツは何も言わなかった。ただ少しだけ、ガスマスクから漏れる息が増えたような気がした。
"そうだろうな"と、溜息をつくように。

「…俺は信じるよ」

はっきりとした声が耳朶を打った。真っ直ぐ向けられた琥珀の瞳が、俺を射抜くように向けられていた。

「俺は、榎森を信じる。同じ身体だから」
「…そうか」

それだけ言って、俺は少しだけ皆より先を歩いた。