呪箱異譚 (ページ12)

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拾壱：異質な気配ページ12

伏黒side

「虎杖っ！」

虎杖の姿を見つけて声をかけると、虎杖は「あ、二人共！」と呑気に手を振って此方に駆け寄ってきた。
五条先生が居る事にも驚きだが……後ろの奴は誰だ？

「一体どういう事なのよ！あと後ろのガスマスクは誰！？」
「それが俺もよく分かってなくて……」

虎杖の様子を見る限り、ガスマスクに関しては五条先生絡みなんだろう。
見慣れない奴、帰った筈なのに居る五条先生、そして……

……成程な、大体の見当がついた。

「全部ヤラセですか」

俺が居た廃マンションにも、釘崎の居た廃工場跡地にも確かにコトリバコは存在した。
正確に言うと、コトリバコの呪力が籠もった釘(・・・・・・・・・・・・・・)が打ち込まれていた。

結界術を内包した釘が、コトリバコの呪力によって動作していた。おかげで不可視の帳の中で呪霊が山のように湧いていた。

まるで、呪霊を呼び寄せるのが目的かのように。

「抜き打ちテストだよ！実にも手伝ってもらったけど、軽々とクリアするなんて流石僕の生徒達～！」
「最低」
「相当イカれてますね」
「テストでやばいモンの回収行かせたの！？」

ほんと、この人の考える事はまともじゃねぇな。…あと、

「ソイツ、呪霊ですよね。何で制服着てるんですか」

隣のソイツは、一体何だ？

「あぁ、この子は榎森実。今日から皆と一緒に過ごす事になった新しい一年生だよ」

五条先生がソイツの肩にポンと手を置くが、ソイツは黙ったまま石像のように突っ立っていた。
気味が悪ぃ……。どう見ても生き物って感じがしねぇ。

「仲良くしてあげてよ。こう見えても彼、悠仁と同じ秘匿処刑対象なんだ」

……は？

「じゃあ、榎森も何かしらの呪い食べちゃったって事？」
「そ。実はコトリバコの受肉体でね。でも拒絶反応が起きちゃって、まだちょっと存在が不安定なんだ」

先生が榎森の腕を掴み、手袋を剥ぎ取る。
手袋の下から現れた手は、真っ黒な泥のような液体になっていた。

「ご覧の通りさ。それに意識もあるのかどうか分からない。でも害は無いよ？僕の監視と、一人の術師による縛りで制御できてる。でも彼だって僕の生徒だ。楽しい事を存分にやって欲しい。だから彼も友達にしてやってくれないかな？」

友達？コイツと？

「(なれる訳がない)」

そう思った。友達になるなんて無理だと、そう思った。
でもそれじゃあ、俺と虎杖はこうして一緒に居れねぇ。

「…良いですよ」

仲良くしてやっても。