拾：突然の登場 ページ11
五条side
「はい、そこまで」
僕が声を出すと、悠仁目掛けて飛んでいった鎖は彼を貫く寸前でピタリと停止した。
「いやぁ〜間に合って良かった！」
ほんと、相変わらずのようで何よりだよ。
じっと悠仁を見つめるガスマスクを視界に収めながら、ポカンとした顔で見つめてくる悠仁に視線を移した。
うわぁ、派手にやられたねぇ？
「大丈夫かい？悠仁」
「え、あれ、先生！？何でっ」
「ごめんごめん。実はコレ、ドッキリなんだよ」
「……へ？」
おっ、いい反応！
驚きの声をあげる悠仁の反応に思わず笑いが吹き出した。ほんと面白いなぁ。
「説明は後でするから、とりあえず外に出よっか」
「で、でも先生っ、此処出口無くて…」
「大丈夫大丈夫！ほら実、出口作ってあげて！」
『……』
僕がポンと彼の肩を叩くと、実は少しの間を置いてすっと腕を前に伸ばした。
途端に真っ黒な泥のような液体が盛り上がって、それはたちまち襖へと変化する。静かに開いた襖の先には、明るい光に照らされた住宅街が見えた。
「え！？外ぉ！？」
「此処は彼の生得領域を具現化した場所なんだ。まぁそれも後で説明するから！閉じない内にさっさと外に出る、よっ！」
「うぉわっ！？」
背中を押して領域の外へと出れば、後ろでパタンと襖が閉まる。パシャリと溶けて消える音を聞きながら、僕は悠仁と実の背中を叩いて駅に戻るようにと告げた。
「あ、あのさ先生」
「ん〜？」
「この人、誰？」
「あぁ、僕の教え子だよ。悠仁達にとっては新しい仲間ってところかな」
「つー事は、新しい一年？」
「そういう事！」
「マジで！？」
いやぁいいねぇ悠仁は。同じ一年だと分かった瞬間嬉しそうな笑顔になっちゃって。
で、一方の実はと言うと……
『……』
無反応、か。まぁ前からこんな感じだから予想はしていたけど、まだ本調子じゃないかぁ…。
「恵と野薔薇にも駅の方に向かうようにって言っておいたから、もう集まってる筈だよ。それにしても、手酷くやられたねぇ悠仁」
「あっ、そうなんだよ先生！コイツめっちゃ強くてさ！」
今までの事を話してくれる悠仁と、無言でついてくる実と一緒に駅へと向かう。
それにしても、実とこうして会うのは一年ぶりだって言うのに、まさかここまで強くなってるとはね…。悠仁もそれなりに強くなってるんだよ？
「(さてと、皆がどんな反応するのか…楽しみだ)」
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2021年1月12日 16時
