肆拾捌:これからの旅路 ページ49
実side
「いつまで寝てんのよ全く!早くしなさいよ!」
釘崎が振り返って檄を飛ばす。ふらふらと歩く虎杖を支えるように後ろに回りながら、俺達は先に集合していた伏黒と釘崎の下に向かった。
『悪ぃ。コイツ寝不足なんだ。背負っていくから許してくれ』
「いいわよそんな事しなくたって。どうせ行きは一本電車乗るし、そこで寝かせておきなさいよ」
「行くわよ」と歩き出す釘崎の後を追うようにして歩く。虎杖はまだ「ん〜…」なんて寝ぼけた声を出しながら、俺の手をしっかりと繋いで歩いていた。
『(大丈夫だろうか…)』
結局深夜までゲームして、寝落ちる形で寝たんだよな。俺は夜更かし慣れてるけど、虎杖って健康的な生活送ってそうだし…無理させたか?
「なぁ、榎森」
伏黒が隣に来る。俺は虎杖を気にしつつ、伏黒の方を見た。
『何だ?』
「昨日の話、聞いちまった」
昨日の…、…嗚呼、アレか。
『別に気にしていない。それに、お前にも頼もうと思ってたしな』
「……」
何だ、難しい顔をして。
「…俺はお前を離さねぇからな」
『は…?』
小声で呟かれたその声に、思わず素っ頓狂な返事を返してしまう。伏黒は意を決したような、どこか怒っているような目で、地面を見つめていた。
「俺は、お前の事が知りたい。話も聞きたい。一緒に居たい。……だから、俺から離れるな」
『…それって、どういう「まだぁ〜…?」…!』
寝惚けた声に俺達は虎杖の方を見る。目を擦って欠伸を漏らすその姿に、さっきまでのぴりついた空気が和やかになった。
「もう少し早く歩くか」
『そうだな』
ちょっと先では釘崎が既に切符の準備をしている。俺達も早く電車に乗るとするか。
『行くぞ虎杖』
「ん〜…」
「しっかりしろよ」
伏黒が背中を叩き、虎杖が眠たげに切符を取り出す。俺はその光景に少しだけ微笑んだ。
自分の時間は後どれぐらいあるのか分からない。それでも、皆と長閑な時間を過ごせるなら、上の望む通り死んでも良いと思う。
『(まぁでも、もうちょっとだけ遊ばせてくれ)』
この身が呪いと共に消える、その時まで。
To be continued…
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時