謎は深まるばかりで ページ8
中原side
本部に戻る途中、ずっと喋らない直哉を俺は半分心配していた。
あの気持ち悪ぃ男から情報読み取って以降、うんともすんとも喋らねぇんだよ。
「(おい直哉。聞いてんのか手前)」
歩きながら頭の中でそう声をかけても反応は無い。他人の影に入ってる時の直哉はこうしねぇと会話できねぇんだよな。
逆に云えば様子が分からないから何してンのか分かんねぇンだよなァ……
『(…すまない。考え事をしていた)』
お、やっと反応した。考え事ねぇ……。
「(先刻の男の事か?何か情報得られたのかよ)」
目立たない人の少ない道を歩いていく。昼間とはいえ万が一襲撃でもされたら困るからな。それに軍警の目もあるし。
『(嗚呼、あの男には何者かの異能力の痕跡があった。恐らく小生達に会う前に何者かと接触していたのだろう)』
「(で?其奴の情報は?)」
『(……すまない。分からなかった)』
分からなかった?あの直哉が?
「(如何云う事だ?)」
『(靄がかかっていて分からなかった。それに、その靄のかかった箇所を読もうとしたら……)』
……おい、何で黙るんだ。
『(……だが、分かった事もある)』
直哉の声に耳を傾けながら迎えに来た部下の待つ車に乗る。
後はこのまま到着するのを待つだけだ。一寸ぐらいは直哉の方に集中しても善さそうだな。
「(分かった事って?)」
『(あの男に小生の情報を聞けと命じた組織の名だ。"蛇の眼"と云うらしい)』
「蛇の眼……!?」
あ、やべっ。声に出しちまった。
「如何いたしましたか?」と声をかける運転手に「何でも無ぇ」とだけ伝えて誤魔化す。蛇の眼……確か、海外の異能組織だったよな……。
「(成程、だから蛇か)」
『(小生はこの組織の事は知らん。御前は?)』
「(知ってるぜ。昔嫌という程調べさせられたからな)」
嗚呼、今思い出しても腹立つ。だが、そうか……蛇の眼ねぇ……。
「(帰ったら速攻で首領に報告すンぞ)」
『(分かった)』
こりゃ面倒な事になりそうだ。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月20日 2時