そんな話聞いた事も無い ページ5
中原side
「そう云えば中原幹部、小耳に挟んだ話なのですが……少々お聞きしても宜しいですかな？」
男は目を細めて笑みを浮かべる。
嫌な笑顔だ。この界隈でふくよかな体型の奴ってのは、典型的な雑魚しか居ねぇのかァ？
「何でしょうか？」
「そちらにはあの伝説的な異能力があると聞き及んでいるのですが……真でしょうか？」
「伝説的……ですか」
ンだそりゃあ。そんな伝説にも残るようなモンなんざ、ウチには無ぇ筈だが……。
「さぁ。何のことやら、一体何の事を仰っているのですか？」
「そう勿体ぶらずに。これから仲良くしていく者同時、腹の内を多少は見せて頂かないと」
「……成程」
そういう事か。挨拶代わりに手の内を一つ話す、だから手前も手の内晒せってか。依頼された事ってのは情報集めか。
「で、どうなのですか？あるのでしょう？あの異能力が」
「……異能力と一口に云いましても、ウチには様々な異能力者が居ますので判断しかねますね」
「ははっ、それもそうですな。では回りくどい言い方は省きましょうか。……"暗夜行路"と云う異能力をご存じですかな？」
「……！」
暗夜行路、つー事は……
『(矢張り、小生目当てか)』
頭に響く直哉の声が呆れたように言葉を吐く。目の前の男は軽く俺に近づいてくると、「どうなのです？」とニヤリと笑いかけてきた。
……気持ち悪ぃな。
「嗚呼！勿論知っていますとも。ウチの組に居る異能力者の異能ですね。それが何か？」
「なんと！あの異能力を操る異能力者が居るとは！それはそれは、さぞやお強いのでしょう？神の如き異能力を手にするとはなんと幸せな……！」
神…？この直哉の異能がそんな大層なモンなのか？
男はまるで恍惚とした表情ではぁと息を吐く。そしてその表情のまま俺をじっと見つめてきた。
「ぜひお会いしたいものですな…」
……次は直哉を持って来いってか。
それに…背後にあるドアに人の気配が現れた。異能力者じゃねぇが……囲まれてるな。
「……構いませんよ」
ニコリを笑ってやる。コイツァ善い。折角だ、土産の一つでも貰おうじゃねぇか。
「次とは云わずに、今此処で会ってやろうか』
此処で交代だ。舐めた態度取るならこっちもそれ相応の態度を示さねぇといけねぇ。それに直哉に会いたいって願いも叶えてやるんだ。
嗚呼、俺って凄ぇ優しいよなァ？
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年5月20日 2時
