探り合いに強いのは ページ4
中原side
「これはこれは、中原幹部ではありませんか」
「お初にお目にかかります」
帽子を取り頭を下げると、目の前の男は深い笑みを湛えた。
首領に任された取引先は、ポートマフィアに人員の派遣を行う組織だ。人の死が多いこの界隈ではこういった組織との繋がりも強い。反面、人員派遣ってのは諜報員のような人間も送ってくる。
別に悪意があってやるわけじゃねぇ。情報を偽ってこういった組織に紛れ込んだり、組織側が金をもらって意図的に送ることもある。
今日は丁度相手側が選んだ人間を採用するかどうかの取引だ。
「首領の代理で参りました」
「それはそれは…あのお人もさぞや大変でしょうなぁ。ささ、どうぞお座り下さい」
ふくよかな手が俺の近くのソファを指す。促されるままに座ると、男は向かい合うように座って早速とばかりに机の上に資料を並べ始めた。
「戦闘に優れた者、諜報に優れた者、幅広く用意しました。是非ご覧下さい」
初めてにしちゃ用意周到だな。
資料を手にして読んでみれば、たしかに有能な奴らばかりが揃っている。……出来すぎてるぐらいにな。
「(どう思う、直哉)」
『(これは偽造だな。相手は依頼されて用意したようだ)』
依頼ねぇ。しょっぱなからかましてくるのは相当舐めてるのか、それとも試しているのか……。判断付けかねるが、直哉が云うなら間違いないだろう。
却説、この4人の中で誰を取るか…。別に取らなくても善いが、足運んで手ぶらってのもなぁ……。
『(左から二番目を小生の所に、一番右を御前の下に置くのはどうだ)』
「(あ?)」
『(その二人が一番マトモだ。当人に会わない限りどのような者かは分からないが、少なくとも目の前の男から得られる情報ではその二人が善いと小生は思う)』
紙面じゃ俺の方は情報収集に長けたやつ、直哉の方は戦闘が得意なやつになっている。
……逆じゃねぇか?……いや、でもあえて逆のやつを入れても善いか……。
「そうだな……。この二人は善い。うちに是非とも欲しい人材だ」
云われた通り例の二人の資料を出すと、男は笑みを浮かべて「かしこまりました」と頷く。後は会ってから考えればいいか。
直哉を連れてきて正解だった。こういう場面は特に頼りになる。……後は此奴らの腹の内探るだけだな。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月20日 2時