それはとても懐かしく、親しみのあるものだった ページ2
志賀side
【ね、君はどんな事でも出来るの？】
『まさか。出来るのはこうやって言葉を理解して話す事ぐらいだよ』
【そうかぁ…。でも君の事だから、何時か屹度凄く立派なヤツになるんだろうなぁ】
……あれ？こんな話、してたっけ……？
……と云うか……俺は今何処に居るんだ……？真っ暗で何も見えない……。
【約束だ。僕は君とずっと一緒に居るよ。どんな事があっても、一緒に乗り越えよう】
……誰だ？知らない声……。…でも、何処か懐かしいような……。
『………』
眩しい……。目を開くと、視界いっぱいに光が差し込んできた。
……白い天井……？……嗚呼、そう云えば……。
「…！志賀さん…っ」
右側から声がする。少し首を動かして右を向くと、驚いたような、安心したような……そんな表情を浮かべる龍の顔が見えた。
『……御早う、龍……』
「……っ、お早う御座います…っ！」
右手を強く握られる。…そうか、小生が目覚めるまで此処に居たのか……。
小生の手を握って、ずっと……。
『心配かけたな……』
「いえ…っ！志賀さんなら屹度、目を覚ましてくれると思っておりました…！」
…泣き腫らした目で何を云ってるのやら。本当に龍は可愛いなぁ……。
……そうか。小生は確か、探偵社から戻る際に襲われて……全身を蜂の巣にされたんだったな……。
麻酔の影響か、それとも昏睡していたからか、曖昧だった意識がはっきりしてきた。
身体は動かそうとしても動かない。あれだけ撃たれれば流石に肉体が先に死んだか。脳や重要な臓器さえ生きていれば死体でも使う事が出来るが、今回は脊髄がやられたようだ。
『……死体は？』
「既に用意しております。……移りますか？」
『嗚呼。それと、皮膚に触れていない所の包帯は切り取って消毒しておいてくれ。死体に使う程勿体無いものは無いからな』
「承知」
次があるなら早々に離れてしまおう。
頷く龍を見てから微笑み、枕に頭をつけて目を閉じる。云うなら夢を見ている時のような感覚だろう。
多少の浮遊感を感じて目を開けると、上手く身体から出られたようで龍の足が目の前に映った。この状態だと地を這う事しか出来ないのが悩みの種だな。
龍の影に近づいて、顔を突っ込むように影の中に入る。水気の多い泥のような影の中に入り切ると、一瞬だけ静電気のようなピリッとした感覚が走り、そして……。
「直哉ァ！！」
「っ！？」
耳を劈くような高い声に、乗り移ったばかりの頭ががんがんと揺れた。
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年5月20日 2時
