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信用しているからこそ ページ36

芥川side

爆破は好かぬ。熱い空気が喉を焼いて、酷く咳が零れるからだ。

「ケホッ、コホッ」

口を押さえながら数度咳き込み、燃え上がる船を背に目の前の男に黒布を向ける。
"早蕨"で無数の棘と化した黒布の間を器用に避けるその男は、「危ないじゃないですかぁ!」と間抜けな声を漏らした。

「僕は太宰さんを助けたいだけなんですって!」
「それを止めるのが僕の役目だ。…《羅生門・"顎"》」

僕の指示を受けた黒布は鋭い牙を持つ黒獣となって襲いかかる。
…この男は怪力の異能力者、例え避けられようと周囲に散乱する瓦礫を片付ける事さえ出来れば善い。


『"殺さずとも善い。小生が任を終えるまで時間を稼げ"』


先程、指定された船で待っていた際に出会った志賀さんからの言葉を思い出す。
志賀さんは数日前から探偵社の国木田と云う男を捕虜にし、その男に化けて代わりにご自身が探偵社へ潜入していた。探偵社を使って自身の事を探る者を見つけ出す為の事らしいが…

「(これさえ終われば本人から褒めの言葉を貰える…!)」

今まで影で生み出された分身を通しての交流だった。これが終わった後、志賀さんによくやったと一言貰えれば、それだけで…っ!

目の前の男の周囲を黒布で取り囲む。これしきでそう簡単に終わってくれる相手では無い事は承知の上での行動だ。

「えーい!」

バンッと風船を割ったかのような音。黒布を貫きその解き目から出てきたその男の手には、道端にいくらでも転がっている小石が握られていた。
小さな石でもそれなりの速度で投げれば弾丸に匹敵する。厄介な……っ!

「手足の1、2本は諦めてもらおう…!」

黒獣を飛来させる。全てを噛み砕く牙に向かって、男は手にした小石を勢いよく投げつけた。
牙に触れた物は塵となって消えるが、それ以外は黒布を削って僕の方へと飛んでくる。即座に空間断絶で石の弾丸を防いだ時、男は僕の横を抜けて船の方へと走り出した。

拙い、太宰さんを扶けに向かう気か…っ!

「……!」

足元の影が水のように揺らめく。志賀さんが仕事を終えたという合図だ。

「…此処までか」

異能を解き、黒布を外套に収める。振り返り僕の様子を窺う男の視線を背に、僕はその場を後にした。
船を爆破した程度では太宰さんが死ぬことは無い。それを信用して志賀さんの策を実行したのだ、屹度太宰さんは生きているのだろう。

「……早く戻るか」

今は一刻でも早く、時間まで足止めできた事をお伝えしなければ…!

居ない内の事実→←最初から一つの事しか考えていない



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 男主 , 文スト   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年1月10日 1時

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