次の動きはこうしようか ページ30
太宰side
「……それにしても、真逆偽物を掴ませるとはね…」
椅子に背中を預けて考える。どうやら二人がビルの方で捕まえた直哉は偽物だったらしい。
賢い子だ、事前に二人が来る事を知って用意したんだろう。
「(随分と此方の動きを判っているような動きだ。それに、何処か弄ぶような動きも気になる……)」
彼の異能は暗殺・殲滅にとても向いている。閃光弾のような強い光を浴びると影が霧散する弱点はあるものの、全方向から強い照明でも浴びせない限りは殺戮の限りを尽くす。
でも敦君達の話を聞いていると、そんな彼がもったいぶるように異能を抑えて使っているように感じた。
……まるで異能を見られたくないとでも云うように。
「(普段なら潜伏からの串刺し……。いや、部屋の電気を消してから闇に溶け込んで闇討ち…の筈なのだけれど…。影の帯で態々攻撃してきたのは、そういう異能だと見せる為…?でも誰に?)」
敦君や谷崎君に対してなら無意味な行為だ。私が居る以上、直哉の情報はほぼ筒抜けだと思っていいだろう。彼もそれは理解している筈だ。
だとしたら、探偵社以外の人間に向けて?
「太宰さん!」
思考の波から意識が戻る。
賢治君だ。彼は手にした書類と共に手を振りながら、私の側まで寄ってきた。
「頼まれていた資料、やっと纏まりました!これで善いですか?」
「あぁ、有難う賢治君。助かるよ」
資料を受け取り、その紙面に書かれた文字を一通り読む。………成程、矢っ張りか。
「あーぁ、本当に大変な事に首を突っ込んでしまったねぇ」
天を仰ぐようにして溜息をつく。
……でもこればかりは動かないといけないかなぁ〜……
「賢治君、すまないが私と一緒に来てくれないかい?後国木田君呼んで来て」
「何処か行くんですか?」
「一寸ね。念の為の確認、と云うところかな」
ティーフには背後に何か居る気がしてならない。だからこそ"それ"が何なのか把握しておきたかった。
場合によっては、探偵社の手にすら負えなくなるかもしれないからね。
「分かりました!国木田さんを呼んできますね!」
「助かるよ〜」
賢治君の背中を見送ってからうんと伸びをする。椅子から立ち上がり長外套を着てから、はぁと小さく息を吐いた。
「(直哉が何を警戒しているのか…暴きに行こうか)」
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年1月10日 1時