何時までも続く世界の果てに (ページ17)

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火遊びと砂糖菓子ページ17

森side

時計の針が夜の8時を指そうとする時間、コンコンと小さなノックが聞こえた。

「入り給え」

声をかけるとドアはゆっくりと静かに開かれる。その先に居たのは、片手に白い箱を持った志賀君の姿だった。

『失礼します。エリス嬢から頼まれたケェキを届けに参りました』

この子本当に仕事終わりに買ってきたのかい……？真面目だなぁ……。

『遅れてしまい申し訳ありません』
「いや構わないさ。忙しいのにすまないね」
『これも首領とエリス嬢の為ですから』

そう微笑む彼の顔ときたら…もういい子だね君…！その真面目さと優しさを私は一番信頼しているのだけど。
マフラーを少し引き上げて彼が机の上に箱を置く。すると小さな足音が私達二人の方へ駆け寄ってきた。

「ナオヤ！ケェキを買ってきてくれたのね！」

嗚呼エリスちゃん……！志賀君に抱きついてはしゃぐ姿も愛らしい……！
キラキラと目を輝かせるエリスちゃんに、彼は『開けてみてください』と箱を開けるように促した。
エリスちゃんはもう目を落っことしそうな程キラキラした目で頷いて、楽しそうにケェキの箱を開け始める。

「わぁ…！リンタロウ見て！たくさんケェキがあるわ！」

そう云ってエリスちゃんは箱の中を私に見せてくれた。
おや、ショートケェキの他にモンブランとチョコケェキが追加されているね…？

『遅れたお詫び…と云いましょうか。首領にも是非召し上がって頂きたいと思い、勝手ながら選ばせて頂きました』
「私の分まで用意してくれたのかい？有難う、とても嬉しいよ」

彼の厚意だ、有り難く頂くとしよう。…そうだ。

「志賀君、好きな物を一つ持って行きなさい」
『…！宜しいのですか？』
「勿論。日頃頑張ってくれているから、そのお礼と思って欲しい」

箱の中を見せれば彼は少しケェキを眺めた後、私に視線を移した。

『エリス嬢と首領が選ばなかった物を頂戴したいのですが…』
「おや、いいのかい？」
『はい』

ふふ、上司想いのいい子だ。では遠慮無く。
彼が持って来た宝石のような苺の乗るショートケェキと、光沢のあるチョコがかかったチョコケェキを箱から取り出す。
残ったモンブランを志賀君は箱ごと手にすると、『では小生はこれで』と一礼して部屋を出て行ってしまった。

「何処までも優しいね、彼は」

手にしたチョコケェキのように、甘くほろ苦い優しさの持ち主だ。いい子だよ、本当に。