関わる全て仇なすならば ページ11
志賀side
探偵社が来る数刻前…
『……此処か』
捲り上げた絨毯の下には、重そうな鉄の扉が覗いていた。部下達に情報を集めさせたが、その中で一つ気になる事がありこの廃墟へと小生は来ていた。
首領から掃討を命じられたが、ティーフは自身の組織を拡大させる為に【ハイエナの牙】と云う薬の売人を集めた集団と手を組んでいると云う情報を部下が掴んだのだ。
ティーフのみを叩いても善いが、ハイエナの牙を放置しておけば別の組織と手を組み、ポートマフィアを脅かす新たな組織を生み出す恐れがある。邪魔な芽は早めに摘むべきだ。
扉を開けると、黴臭さと共に冷たい風が小生を出迎える。階段……地下に続く通路か。
見たところ手掘りで最近造られたもののように感じる。周囲に人の気配が無い事を確認してから、そっと階段を下りて行った。
点々と設置された明かりを頼りに進んで行くと、暗い通路の先に大きな鉄の扉が見えた。
如何やら此処が拠点のようだな。
『…監視の目は無し、か』
カメラの一つでもあるかと思ったが、まぁ入り口を隠しているから必要無しと判断したのだろう。有難い事だ。
明かりが通路を照らす中、小生はその場で静かに異能を発動した。
目を開けると、其処は強い薬品の臭いで満ちた室内だった。上手く潜入出来たようだ。
『…これはこれは。商品がそのまま置いてあるじゃないか』
原料となる植物が栽培されている棚に囲まれた室内には、棚以外に粗末な椅子と机しか無かった。
机の上を見ると、調合器具に薬の製造法が書かれたメモ、取引相手の連絡先が書かれた連絡帳が置いてある。此処が拠点で間違い無さそうだ。
却説、如何してやろうか。これを放置すれば、首領に仇なす者達の懐に金が入り続けるだろう。……ならば。
「困るよ〜お客さん」
室内をめちゃくちゃにしてやろうとした時、外から微かに声が聞こえた。
…足音が4つ、如何やら2人の人間が此処を目指して歩いて来ているようだ。
「こっちもねぇ、商売の時間ってモンがあるんだよ」
「で、でも娘が如何してもと…！」
「…仕方無ぇなァ。長い付き合いだ、今回だけだぞ？」
「…！有難う御座います！」
…予定外の客か。なら荒らしでもしたら警戒されるだろう。一度身を隠すべきか。
「…っと、あったあった」
部屋に入って来た小太りの男が薬の包みを取り、部屋を出る。その後を小生は静かに追いかけた。
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年1月10日 1時
