検索窓
今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:86,935 hit

. ページ33

'


暫くした後、彼女がおずおずと口を開いた。

「それ、本当…?」
「何が?」
「その、私しか、ってやつ、」
「100%本気だけど」
「う、嘘だ、」
「嘘つくメリット無いじゃん」
「だってもっと綺麗な女優さんとか、たくさん、」
「見た目綺麗なだけで選ぶのは失礼でしょ」
「……わ、私も好き、で、でも妹みたいって言われてて、私じゃダメなんだなって思ってたのに……」
「えっ、何それ、初耳なんだけど」

彼女の話を聞いた途端、先程までの苛つきがどこか遠いことのように思えた。

ずっと、お互い遠慮し合って勝手に諦めて、何だか馬鹿馬鹿しい遠回りをしていたのか。

「A好きなの、俺のこと」
「うん、お兄ちゃんて呼んでた時から…」

お兄ちゃん、なんて、小学生で卒業した呼び方だ。

「めっちゃ昔じゃん」
「そうだよ!私の憧れで、格好良くて、優しくて、大好きだったのに…」
「……マジかよ」
「なのにいつまでも妹のままで、私じゃ無理なんだなと思って……もう幼馴染のままで、いいかなって、」


その先の言葉が紡がれる前に強く抱き締める。
耳元で彼女が啜り泣く音が聞こえた。


「ずっと我慢させてた、ごめん」
「ううん、でも今日、ちゃんと分かったから」
「俺もずっと好きだよ、A」
「うん、私も好き、拓司くんのことが好き」


控えめに背中に回る手が愛しくて、また腕に力を込める。


「両思いって分かると、もう妹とか幼馴染とか全然思えねぇわ」
「両思いとか…恥ずかしい、」
「もう成人してんだからそれぐらい平気だろ」
「いや、拓司くんが相手だと思うと…やっぱ無理!」


こちらを見ていた顔をサッと覆った手が邪魔で、素早くどけて顔を近付けると大きな目が更に大きく見開かれた。


「次うちに来るときは彼女ですって堂々と来てよ」
「か、かのじょ、」
「幼馴染より良いだろ」
「うん…」


口付けを落とすと、一回り小さな身体が少し震える。

恥ずかしそうにはにかんだ彼女は、数分前より幾分大人びて見えた。


.

さよなら、慟哭:kwmr→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (79 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
228人がお気に入り
設定タグ:QK , QuizKnock , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

キタ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。まさしくミッシェルの「世界の終わり」を意識していましたので、分かっていただけて嬉しいです。拙い文ばかりですが、また更新していきたいと思いますのでよろしくお願いします。 (2019年10月29日 0時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - はじめまして。「終焉のエピローグ」を読んで、初めてコメント致しましたm(_ _)m。ミェルガンエレファントの「世界の終わり」のような世界でquizknockとミッシェルが好きな私にはたまりません(*^-^*)。これからも楽しみにしています(^-^) (2019年10月28日 22時) (レス) id: 4daa7caae5 (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - やまうみ。さん» コメントありがとうございます。前作からということで長い間ご贔屓にしていただけて有難い限りです。例の件はこういうジャンルではままあることですので、仕方ないですね。なるべく更新し続けていけたらと思いますので、今後もよろしくお願いします。 (2019年10月14日 2時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 初めまして、コメント失礼いたします。前作からずっと読ませていただいておりまして、どのお話も読みごたえがあり美しい文章にやられております。騒動があったなかで続けてくださる数少ない作者様の一人でいらっしゃるキタ様が憧れです、これからも応援してます! (2019年10月13日 19時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - 佐野様>>コメントありがとうございます。良く見るお名前にびっくりしていますが、前作からお読み頂けていたなんて光栄です…!纏まりのない話ばかりですが、色々捻り出して更新してみたいと思います。佐野様の作品も楽しみにしています。 (2019年10月6日 22時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:キタ | 作成日時:2019年9月26日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。