第６話 日課。 ページ6
A「いってきまーす」
大きな声で言ってみても
返事が返ってくることはない。
そんな事、わかってるけど
無言で出掛けるのは
もっと寂しいことだと思うから…
A「……いってきます…」
私は玄関の鍵を締めると
表札の「(人１)」の文字を指でなぞった。
A「……」
あの頃は"(人１)"になることが
すごく嬉しくて
この表札を見るだけで幸せだったのに…
A「…よしっ(^^)」
私はモヤモヤした気持ちを消すように
今日も背筋をピンッと伸ばして出発した。
｜
｜
―――― カツ カツ カツ…
早朝の空気はいつも澄んでいて
ヒールで歩く私の足音が
周囲のマンションの壁に反響して響いて
私には心地がいい。
家から駅まで真っ直ぐの一本道。
私は駅まで前を向いたまま歩くことで
邪念を振り払うかのように
精神統一をするのが日課になっていた。
…そんな事をわざわざするのは…
A「……」
いつも駅までの道の途中にある公園に
つい視線を向けてしまう。
この公園は唯一、私が心を許せる場所。
ここで泣いて泣いて…
幾つもの夜を過ごしてきたから。
公園のベンチや街灯、
そこにある花や木を見るだけで
フラッシュバックするみたいに
あの時の気持ちが蘇ってくる。
私は一瞬緩みそうになる気持ちを
また引き締めて真っ直ぐ駅を見つめて
大股で歩き出した。
しかし、公園を通りすぎた時
なんとなくだけど足を止めた。
A「……」
振り返って見つめる先には
公園のベンチで
いつも同じ缶コーヒーを片手に
足元を見て項垂れている男性。
出勤前なのか、それとも帰宅途中なのか。
手ぶらで缶コーヒーのみの彼の姿が
印象に残っている。
毎朝いるわけではないけれど
見掛ける時は何日か連続してそこにいる。
…彼も何かに悩んでいるのだろうか…
A「……っ！」
項垂れていた顔を上げた彼と
目が合いそうになって
私は咄嗟に顔を前に向けた。
彼は何歳ぐらいなんだろう。
結構若い気がする…大学生ぐらいかな。
私はそんな事を思いながら
真っ直ぐ前を見て歩き出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東方神起」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
natsu(プロフ) - ﾁｬﾐloveさん» Beginよりも短く終わる予定…ですが(笑)またお付き合いください＾＾ (2012年5月6日 23時) (携帯から) (
レス) id: d2dbf80673 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：natsu
| 作成日時：2012年5月6日 1時
