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たとえば本の中に出てくる愛の告白は、もっときらきらしていて、心躍るものだった。
少なくとも、寒風吹き荒ぶ冬の海で、涙と鼻水混じりにされるものではなかったはずだ。
元々自分には縁遠いものだと思っていたけれど、思ってもいなかったタイミングで放り込まれてしまったそれに、何と答えていいのか分からない。
その突拍子もなさは確かにテヒョンらしかった。
だけどテヒョンの手が震えているのが、寒さだけのせいじゃないことも分かっていた。
体ごとテヒョンに向き直った。
海も岩肌も見えなくなる。見えるのはテヒョンだけだ。
「私はね、テヒョンのこと嫌いだよ」
気合いを入れて出したつもりの私の声も情けなく震えていた。
そのまま、テヒョンの手を取った。
大きいとは思っていたが、改めて触れると、手袋越しでもはっきり自分の手との違いが分かる。
あの夏の日に繋いだ手は私よりも小さかったのに、いつの間にこんなに大きくなったのだろう。
「知ってたよね。
なんでも持っててずるいって、どうしてテヒョンばっかりって、そう思ってたから」
胸が苦しかった。
こんな酷いことを今のテヒョンに伝えないといけないのが嫌だった。
だけど私たちがこれ以上間違えないためには、必要なことだと思った。
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kaya(プロフ) - megcokinoyama02さん» はじめまして。嬉しいお言葉ありがとうございます! 最後のシーンは特に難しかったのですが、どんな状況にも光を灯してくれるテヒョンさんの優しさ、愛らしさを少しでも描けていたのなら嬉しいです。 お読みいただきありがとうございました。 (2022年9月17日 23時) (レス) id: 21e8868223 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - Kojima-Yurinaさん» お返事遅くなりまして申し訳ありません。お読みいただきありがとうございました!ゆっくりではございますが、別作品も書いていきますので、またお楽しみいただけましたら嬉しいです。 (2022年9月17日 23時) (レス) id: 21e8868223 (このIDを非表示/違反報告)
megcokinoyama02(プロフ) - 初めまして。夢中で読みました。すごく奥行きがあるお話で惹き込まれました。最後のシーンは景色や気温、シリアスな雰囲気とチグハグな格好のテヒョンを想像して愛おしくなりました。 (2022年9月17日 23時) (レス) @page41 id: c550134bf4 (このIDを非表示/違反報告)
Kojima-Yurina - 凄く感動するお話ですね 。゚(゚´Д`゚)゚。 これからも頑張って下さい‼︎٩( 'ω' )و応援しています‼︎ (2022年8月22日 15時) (レス) @page41 id: 3d3291bd67 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - ruru_chandayo00さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!更新がゆっくりで申し訳ありませんが、完結まで見守っていただけますと幸いです。 (2022年7月8日 18時) (レス) id: 11e4803e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kaya | 作成日時:2022年6月23日 19時