唇に、さよなら。 (ページ10)

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１０：ロマンスとは無縁。ページ10

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翌朝、起きて顔を洗ったあとリビングに行けば
まだスヤスヤとソファで眠っている紫耀くん。

クッションを抱きながら
気持ちよさそうに丸まって眠っている紫耀くんを
起こすのは気が引けるけど･･･。

｢紫耀くん、起きて。
アラーム鳴ってるよ？｣

爆音で流れ始めたアラームを止めて
ガッチリした腕を軽く掴んで、体を揺さぶる。

｢･･･ん、もう朝･･･？｣

暫く声を掛け続けると
ようやく重たそうな瞼を擦りながら、ゆっくり体を起こした。

寝起きだからか、ハスキーな声が更に掠れて
それがなんだか色っぽく思えた。

朝から、何考えてるんだろ私。

｢やべ、早く電話しなきゃじゃん。｣

体を起こしたあとも、
少しの間ボーッと座ったままだった紫耀くんは
私がキッチンで朝食を作り始めると
ようやく、伸びをしながら立ち上がる。

｢洗面所借りるね。｣と、一声かけて
顔を洗いにいった紫耀くん。

さっき見た寝顔も、寝起きの顔も
ずっとかっこいいままで内心ビックリしてた。

本物のイケメンって、ずっとイケメンなんだな。

それに比べて私は、顔は酷く浮腫んでるし
顔色も少し悪い気がするし
お世辞でも、綺麗だなんて言えない姿で。

そんな姿を、紫耀くんに晒す事に多少の抵抗はあるけど
どう頑張ったって彼の前では自分の姿なんて霞んじゃうんだから潔く諦めることにする。

それに、ちょっと親切な一応地元の先輩っていう
なんとも微妙な距離感だし、
着飾ったところで、ロマンスとは無縁だと思う。

そもそも、私は既婚者だし
紫耀くんだって、きっとモデルさんみたいな彼女がいるんじゃないかな。

いやでも、それなら彼女の家に泊まるよね･･･？

なんて、厚かましくも紫耀くんの恋愛事情に踏み入っちゃってる。