唇に、さよなら。 (ページ24)

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２４：ショートケーキ。ページ24

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本当は、駄目だって分かってる。

いくら冷めきった関係とはいえ、
養ってもらってる専業主婦の立場で
後輩の男の子に浮ついてる場合じゃないって。

だけど、抗えるわけなかったんだ。

その日の夜は、日付が変わる前に紫耀くんが
チェックインを済ませてくれた綺麗なホテルに入って
ルームツアーしながらはしゃいでたら、

ちよっと待っててね、って

一旦、私を置いてホテルの外へと出た紫耀くんは
コンビニの袋をぶら下げて戻ってきた。

｢もうケーキ屋さん閉まっちゃってて
コンビニのだけど、一緒に食べよう？｣

夜景が見える、ガラス張りの窓。
端にある、テーブルの前の丸い椅子に2人で並んで座る。

日付が変わるまで、あと15分。

｢ありがとう、嬉しい。｣

コンビニの袋から、いろんな種類のケーキを出し

｢これ、Aちゃん好きそうだと思ったんだよね。｣

と、キュッと目を細める紫耀くんに
成り行きとはいえ、誕生日をお祝いしてもらえるなんて
とても、贅沢だなと思った。

私の為に、私を想って選んでくれたケーキってだけで
どこのケーキよりも、きっと美味しいと思う。

紫耀くんは私に、忘れかけていたトキメキだけじゃなく
ホッと落ち着いて、胸が温かくなるような瞬間をくれるから
今日はいい日だったなって、幸せな夢を見ながら眠れそう。

｢お誕生日おめでとう。｣

日付が変わると同時に、備え付けのグラスに入れたジュースで乾杯をした。

｢ありがとう。｣

なんだか、面と向かっておめでとうって言われると
ちょっと照れくさくて
そんな自分を誤魔化すように、買ってきてくれたケーキに視線を落とす。

｢食べよっか。｣

好きなの選んでね。と、言って貰えたから
無難にショートケーキを選ぶ。

たったそれだけなのに、

｢Aちゃんって、ほんと可愛いよね。｣

って、急な褒め言葉に瞳が泳ぐ。

｢･･･私今、可愛いところあった？｣
｢うん。ていうか、Aちゃんはずっと可愛いよ。
なんか、ずっと見てられる。｣

なにそれ、こっちは紫耀くんのお顔を
ずっと直視していられるほど耐性ないんだけど･･･。