唇に、さよなら。 (ページ20)

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２０：ブランケット。ページ20

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｢安全運転で行くから、寝ちゃってもいいからね。｣

まだ肌寒い季節の夜、
後部座席においてあったブランケットを
助手席に乗る私の膝元に置いてくれた。

｢･･･女の子、よく乗せたりするの？｣
｢えっ？なんで？｣

だって、このブランケット。
男の人が使うには、ちょっと可愛すぎない？

と、グレーのモコモコした肌触りのいいブランケットを手に取り、モヤっとする心。

｢いや、なんでもない。｣

だめだよ、私。これ以上踏み込んじゃったら。

紫耀くんだって、戸惑ってるし
あくまで距離感を保ちつつ仲良くしてないと。

｢妹だったら、たまに乗せたりするけどね。｣
｢･･････妹？｣
｢うん。車で実家に帰った時に、近くのショッピングモール行く時とか乗せろ乗せろってうるさくてさ。
寒がりだから、そのブランケットも勝手に置かれたんだよ。｣

困ったように眉を下げながらも、優しい表情でそう教えてくれた紫耀くんに
どうしようもなく、ホッとしちゃってる。

｢そうなんだ･･･、紫耀くんの妹さんも
きっと、とんでもなく可愛いんだろうな。｣
｢はは、可愛いけど、めちゃくちゃ気強いよ。
だから俺、いつもバシバシ叩かれてんの。｣

苦く笑って、幼少期のエピソードを色々と教えてくれた紫耀くん。

あの頃には、きっと知り得なかった紫耀くんのことを

今、ちょっとずつ知れていくのが
嬉しくて、久しぶりにワクワクしてる。

信号が赤になって、止まる度に
ハンドルを握る紫耀くんの横顔を盗み見してる。

いつ、どこで、何をしていても様になる紫耀くんは
この先どんな女の子に恋をするんだろう。

その女の子は、きっと世界一幸せになれちゃうんだろうな。

美味しいってご飯を食べてくれる姿も、
かっこよくハンドルを握って運転している姿も、
掠れた声で、おはようって柔らかい笑みも、

全部、独り占めできちゃうんだもん。