唇に、さよなら。 (ページ12)

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１２：正当化。ページ12

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｢ん〜、確かに告白はよくされるけど
みんな、俺のどこが好きなんだろって考えちゃうんだよね。｣

私が作っただし巻きを食べて、
美味しい。と頬を緩めたあと

どこか一点を見つめ始めた紫耀くんは、
紫耀くんにしか分からない悩みと向き合っているんだろうか。

｢紫耀くんは、いい所だらけじゃん！
かっこよくて、優しくて、ヒーローみたいだし。｣
｢ヒーロー？なにそれ。笑｣

虚ろな目が、一瞬にして光を戻した。

私が口に出した些細な言葉に、笑顔を見せてくれるのが嬉しくて心がホッと落ち着く。

｢私は紫耀くんのこと、まだよく知れてないと思うけど
何となく紫耀くんを包んでる空気感が
温かくてヒーローみたいだなって思うよ。｣
｢ほんと？なら俺、Aちゃんの専属ヒーローになるよ。｣
｢えっ？｣

真っ直ぐな目を向けられて、思わず間抜けな声が出た。
そんな返しがくるとは思ってなかったから。

｢Aちゃんが悲しい時とか、辛い時は
俺がすぐに飛んでいくよ。｣

そんな贅沢な待遇、逆に耐えられないよ。

悲しい時、辛い時に耀くんが本当に飛んできてくれたら
きっと、私は簡単にコロッと落ちちゃうから。

そうなったら、紫耀くんを困らせるだけだし
自分で自分の首を絞めることになる。

｢Aちゃんの連絡先教えて。｣

一緒に｢ごちそうさま。｣を終えて、
食器をシンクに運んだあと紫耀くんに言われるがまま
連絡先を交換した。

地元の後輩だし、お隣さんだし、これも何かの縁だと思うし。

様々なこじつけが頭の中でグルグル回ってる。
連絡先を交換しただけで、何もやましい事はしてないのに
わざわざ正当化しようとしちゃうのは

私が既に、紫耀くんに惹かれ始めているからかもしれない。