HALLOWEEN《短編》

〇意地悪 ページ30

･
･



彼は意地悪だ。



私がどんだけ好きなのか分かってるくせに……
意地悪だ。





『で、どうするの？Aさんは。』




「え、あ、いや、はい。ホソクさんの担当ですので、」

『だよね、はい、この話はおしまい。Aさん、ちょっといい？こっち来て？』





ホソクさんは、ずるい。
私がどんだけ好きなのか分かってるから、意地悪なんだ。
絶対に私は断れないし、絶対に私は言うこときくって知ってるから……





『Aさん、今日、終わったら、時間ある？ご飯食べに行こうよ、お酒、好き？』


私の先輩に誘われたのに、



『あ、Aさん？この後用事あったよね？』



ホソクさんは、本当にずるい、意地悪、もう、なんなの、そんなこと言われたら、



「あ、はい。ごめんなさい。今日は用があるのでまた誘ってください。」



私は嘘をつく。
期待して、期待して、ホソクさんの次の言葉を待つんだ。





『また？ また誘われたら行くんだ？』






意地悪。

行かないの知ってるくせに。
期待して、期待して……





『行かないんだろ？』




ホソクさんの顔色をうかがう私の顔を覗き込んで、ニヤリと笑うその顔が、ずるくて意地悪だ。




「そ、そんなこと、分かりませんっ、次は行けるかも……今日は、忙しいだけで、」




『ふん、俺がダメって言っても？』



ドキドキ、ドキドキ……




「な、なんでホソクさんにダメとか言われるのかわからないですしっ、その、えっと、」




『オレがいいって言ったら行ってもいいよ？』

「や、だから、なんでっ、」

『いいから言うこときいて？』

「あ、えっと、は、い。」



真っ直ぐにジィーっと私を見つめて
ふっ、と笑うホソクさんは、ずるくて意地悪で、






凄く、すごく、かっこいい。







･
･

〇可愛い→←作者より

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す