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「では後日お伺いしますね諭吉さん…………


福沢さん。」

「諭吉で構わん。」


しくった。心の中で諭吉さん名義だった所為か
ポロリとこぼれた諭吉さんという呼び名。
急に、そこまで親しくない女に
自分の下の名前を呼ばれた男性は
そりゃもう気持ち悪くて入社なんて取り消し……


はい?


「へ…?良いのですか?」

「あぁ。」

流石諭吉さん、心が広い。
こんな私が諭吉さんの何を知っているのかと聞かれれば
それは勿論答えに困るが

これでも人のいいところは見つけるのは得意だ。

「じゃあねまたね〜、A。」

「はい、またお会いしましょう乱歩さん。」

手を振る乱歩さんと、軽く会釈する諭吉さんを見送って
その日最後の仕事が終わった。


「さてと、杉本くん、Aちゃん、
そろそろ閉めよう。」


店長が数の少ないコーヒーカップやらソーサーやら
焙煎器具、ポット等々、

お店の器具を片付け終えた頃、
にっこり笑ってそう言う。
その姿はまるで某カニバリズムアニメのカフェの店長さん。

「今までありがとうね。」


短い間だったけれど、店長には感謝している。
勿論杉本くんにも。

寂しいな、と思いつつ、休憩室で着替えを済ませ、
スマホ片手にイヤホンを右耳にはめて
少し動画を見る。

スクロールしていくなかで、パッと目に入った5文字。

『浦島坂田船』

ドクンと心臓が跳ねる。
再生回数5万、マイリスト3500
結構頑張っているようで、

まだこれが義弟たちと決まった訳じゃないけど
信憑性は高い。

きっとこれは彼らだ。
私を探してくれているのだろうか。
クスリと笑みがこぼれる。

「さて、

そろそろ戸締まりをするよ。」

「あっ、はい。」

私は店長と杉本くんに頭を深く下げてから
家に向かった。

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空き地@ktnk - 初コメ失礼します。とても面白いです!更新されることを待っています!頑張ってください! (2020年9月24日 7時) (レス) id: da313b2c7d (このIDを非表示/違反報告)
リンレイ - 凄く面白いですね!更新楽しみにしてます! (2019年10月21日 7時) (レス) id: 551bea7f08 (このIDを非表示/違反報告)
光希(プロフ) - めっちゃ面白かったです。更新復帰楽しみにしてます。 (2018年1月28日 16時) (レス) id: cfe2cc8d41 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2017年8月13日 3時

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