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先生「…もって1年でしょう。」
カルテをめくり、こちらを見ずに小さく告げる担当の先生。
「え、もって1年って…。死ぬってことですか…？」
Aは2年前から肝臓の病気で入院している。
Aは辛い治療にも、副作用にも耐えて、やっと希望が見えていた……ときだった。
Aの余命を告げられたのは。
先生「Aさんの病気は手が負えないほどに進行していて、もう治すのは無理かと…。」
『そ…んな。まだ結婚式もあげてないのに…っ！』
Aが俺の隣で肩を震わせ泣き出す。そして俺は優しく抱きしめた。
「嘘ですよね…？何かのドッキリですよね…っ？」
先生は小さく首を横に降る。
先生「Aさんは、もう…っ。」
その言葉を聞いて、今まで溜めていた感情が一気に爆発した。
「うわぁあああ…っ！！！」
“Aが1年も経たないうちにいなくなる”
これは紛れもなく事実だ。
優しいこの笑顔も、スタイルの良いこの身体も、俺の最愛の人も、全部全部この世界からいなくなる。
『和くん…っ！和くん！』
あと1年で俺の大切な人が奪われてしまう。
やっと手に入れた幸せも、全て失う。
『和くん、しっかりして…！！』
Aにそう言われ、ハッと我に帰る。
「A…。ごめん、取り乱しちゃって…。」
下を向きながら、涙を両手で拭き取る。
そして頭を上げると同時に、Aの右手が俺の左肩に触れた。
『私ね、死ぬのが怖い。うん、怖いよ。…でも死ぬのに変わりはないのに死にたくないなんて言ってても無駄だと思うの。』
『…だから、前を向いてこれからの人生は明るく生きたい。それには和くんが必要なの…。』
俺はそれを聞き、左肩にあったAの右手を、Aの頬につける。
「…A。助けてやることはできないけど、これからの人生もAを守る。全力で。」
『うん…っ！！』
それから俺たちは先生の目も気にせずに泣きあった。
脱水症状になるんじゃないかってくらい。
そして俺は決めた。
死んだとしても、Aを幸せにするって。
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作者名：梨 | 作成日時：2018年8月25日 19時
