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「それは……できてない、けど」
それでもなんとか冷静にそう尋ねると、今度はAが言葉に詰まった。向かい合った席なのに、まだ一度も目が合っていない。
「えっと、あのさ。やっぱり俺、忘れられないっていうか……またAを笑わせたい、って思って」
よく噛まずに言えた。声は少しだけ掠れてしまったが、僅かに自分に自信が湧いた。改めてAを見つめたが、やっぱり目は合わなかった。
それでも、Aが答えに迷っていることはわかった。多分、まだ互いに互いを忘れられていない。
「……笑わせてもらってるよ、よく」
少ししてから、Aは小さく呟いた。無理に笑おうとしているのか、表情は引きつっていた。
心苦しかった。ぎゅっと心臓を掴まれているみたいだった。違う。俺は無理に笑ってほしいわけじゃないんだ。
本当は、このまま俺の彼女に戻ってほしい。でも、Aが辛いままなのは嫌だ。どちらかが一方的に我慢するのはおかしい。
＿＿まだどうしようもなく好きだ。きっと、お互いに。
「でも、もっと近くで」
「やっぱり、辛いよ」
Aはそう遮った。その声は、震えていた。
「何が、辛いの」
「拓実君と、一緒にいること」
「じゃあなんで……自分で復縁は無理だって言って、泣くの」
Aは泣いていた。テーブルにぽたぽたと涙が
大好きなあなたは、全身で堪えながら泣いていた。きっとAが怯えていたのは「泣くこと」だったのだと、直感的に推測できた。
＿＿あぁもう、やめてほしい。そうやって泣かれるとこっちまで痛くなる。
笑わせるどころか、泣かせてしまった。それは芸人として、また一人の人間としても恥ずべきことだとわかっていた。
その責任と沈黙に耐えきれず、俺はAをあやすように喋り出した。
「あの……俺のこと拓実君って呼ぶのって、身近にAだけだったんだよね。ただそれだけ、なんだけどさ。特別な気がして、すごい嬉しかった。それくらい……好きだったから」
Aは泣きやまなかった。絶えず涙が溢れて、テーブルを濡らしていく。それでもAは嗚咽一つ漏らさなかった。
俺が喋り続ける他なかった。どれだけの想いを渡したら、Aはわかってくれるだろう。
「別れるとき……『大好きだよ』ってあれ進行形にしたのは、あのときもAが好きだったからで。もちろん今もそうで、だから今日引きとめちゃって」
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キリカゲ(プロフ) - 葉優さん» 感想ありがとうございます！御期待に添えられたなら何よりで御座います……。今後とも、御時間があるときにでも宜しくお願いします！ (2021年4月21日 23時) (
レス) id: 4f510e9748 (このIDを非表示/違反報告)
葉優 - みれました！とっても面白かったですすっごくいいお話でした〜！ありがとうございます！これからも応援してます (2021年4月21日 17時) (レス) id: ecefa0f2d4 (このIDを非表示/違反報告)
キリカゲ(プロフ) - 葉優さん» 遅くなってすみません、続編にてリクエストを公開させていただきました。anotherと書かれているお話までがセットですので、是非合わせて御覧下さい！また、不備が御座いましたらお申し付け下さい……！リクエストありがとうございました。 (2021年4月18日 21時) (レス) id: 4f510e9748 (このIDを非表示/違反報告)
葉優 - 練習帳2！楽しみにしてます^_^ (2021年4月7日 19時) (レス) id: ecefa0f2d4 (このIDを非表示/違反報告)
キリカゲ(プロフ) - 葉優さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけて幸いです。リクエストもありがとうございます！そちらは続編の「練習帳2」にて近日公開致します。少々お待ちいただけると有難いです…！ (2021年4月6日 13時) (レス) id: 4f510e9748 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2021年1月8日 18時
